量産型のイージス艦
かつての「戦艦」に取って代わり、現代最強の戦闘艦といえば、多くの国が導入する「イージス艦」でしょう。
その詳細は別記事に譲るとして、これは高性能なイージス戦闘システムを積み、突出した防空能力を誇る艦種ですが、その始まりはアメリカの「タイコンデロガ級」巡洋艦でした。
そもそも、イージス・システムは別名「神の盾」とも呼び、多数の脅威を探知・追尾しながら、同時に迎撃する統合戦闘システムです。
それまでは探知するレーダー、それを追尾するシステム、迎撃する兵器が別々に動いていたところ、イージスはこれらをコンピューターで統合したうえ、自動的に数百の脅威から優先目標を選び、効率的・革命的な防空戦闘を実現しました。
それはソ連の飽和攻撃に対する答えであって、タイコンデロガ級でシステムの実用化に成功します。そして、タイコンデロガ級で得た知見に基づき、米海軍は量産型のイージス艦に取り組み、それが「アーレイ・バーク級」ミサイル駆逐艦でした。
1番艦の「アーレイ・バーク」(出典:アメリカ海軍)
1991年には「アーレイ・バーク」が就役しました。まもなくソ連は崩壊したとはいえ、以来30年以上にわたって建造が続き、発展改良型が登場しています。アメリカにある80隻近いイージス艦のうち、76隻はアーレイ・バーク級が占めており、いまや米海軍の主力戦闘艦になりました。
横須賀の米第7艦隊への配備はもちろん、海上自衛隊がイージス艦を導入するとき、アーレイ・バーク級を参考したため、日本にとっても身近な存在といえるでしょう。
なお、艦名は第二次世界大戦の名将にちなみ、高速の駆逐艦隊を率いたアーレイ・バーク提督が由来です。彼は「31ノットのバーク」という異名を持ち、戦後は海軍の作戦部長まで登り詰めるなか、海上自衛隊の創設に尽力するなど、日本との関わりが深い人物でした。
当初は「敵」だった日本人を嫌い、露骨に反日感情を表したものの、仇敵・草鹿竜之介との交流を受けて、一転して米海軍でNo.1の親日家になりました。
現代戦闘艦の「完成形」
- 基本性能:「アーレイ・バーク級」(最新型)
| 排水量 | 9,900t |
| 全 長 | 155.3m |
| 全 幅 | 20m |
| 乗 員 | 約320名 |
| 速 力 | 30ノット(時速56km) |
| 航続距離 | 約8,100 km |
| 兵 装 | 5インチ速射砲×1 20mm CIWS×1 SeaRAM×1(一部の艦のみ) 25mm機関砲×2 12.7mm機関銃×2〜4 NSM対艦ミサイル×4 3連装短魚雷発射管×2 垂直発射装置(VLS)×96 トマホーク巡航ミサイル アスロック対潜ロケット ESSM防空ミサイル SM-2/SM-3/SM-6対空ミサイル |
| 艦載機 | 哨戒ヘリ×2 |
| 建造費 | 約3,500億円 |
防空能力を具体的に説明すると、艦橋の四方に固定式の捜索レーダー、「SPY-1(スパイワン)」が付いています。これは回転式の従来型レーダーと違い、常時360度を監視できるため、従来型のような死角がありません。
防空戦闘では反応時間が長い分、迎撃成功率が上がることから、回転式のような空白時間がなく、常に全方向を見渡せる「SPY-1」は有利です。
探知・捕捉した目標に対して、中・長距離のSM-2ミサイルを連続で放ち、最大12個を同時に迎撃します。撃ち漏らしたら、ESSM防空ミサイル・主砲・CIWSの順で狙い、多層的に迎撃する仕組みです。
改良型では長射程の「SM-6」を使い、より遠くで迎撃できるようになったほか、「SM-3」で弾道ミサイルの対処能力を獲得しました。特に日本は北朝鮮に近いことから、横須賀配備のイージス艦はSM-3を積み込み、ミサイル防衛の一翼を担っています。
多彩な兵装がそろう(出典:アメリカ海軍)
他方、アーレイ・バーク級は「駆逐艦」である以上、高性能な防空艦にもかかわらず、対艦・対潜・対地攻撃にも対応しました。
たとえば、敵艦にはハープーン・ミサイル、トマホーク巡航ミサイル、NSMステルス・ミサイルを使い、最低でも150km以上先の目標を仕留められます。
これが対地攻撃任務になれば、主にトマホークの連続発射を行い、最大1,600km先の目標を狙えます。アメリカの軍事作戦といえば、初戦で相手の防空網を容赦なくたたき、完全な「航空優勢」を確保しますが、この優位性を実現するにあたって、イージス艦の精密攻撃は欠かせません。
このような「強み」に対して、アーレイ・バーク級の唯一の懸念といえるのが、潜水艦への対処能力でしょう。ただし、これはアーレイ・バーク級、イージス艦に限らず、全ての水上艦艇に共通する弱点ですが。
潜水艦と魚雷が登場して以降、水上艦は海中から忍び寄る攻撃には弱く、対潜戦の課題はどの国も変わりません。アーレイ・バーク級も防空重視といえども、艦底部には対潜ソナーを組み込み、哨戒ヘリが投下したソノブイと合わせながら、敵潜水艦の発見に努めます。
そして、発見後はアスロック対潜ロケット、短魚雷で攻撃するわけですが、これは他の主力戦闘艦とさほど変わらず、対潜能力は特筆すべきものではありません。
それでも、信頼性の高い防空能力とともに、堅実な対艦・対地・対潜能力がそろい、優れた汎用性から戦闘艦の「完成形」とされました。

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