なぜ自衛隊は民主主義国家の理想的な軍隊なのか?

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国民の信頼度の高さ

突然ですが、自衛隊ってどんな存在ですか?

日頃から日本を守り、災害派遣では頼れる存在、と考える人が多いでしょう。

実際のところ、国民の93%が「良い印象」を持ち、過去最高の好感度になりました。

また、中央調査社の意識調査によると、自衛隊への信頼度は3.6点/5点と高く、医療機関と並んで最高値を獲得しました。逆に政治家やマスコミの信頼度は低く、それぞれ2.4点・2.6点にとどまっています。

ここだけを切り取れば、政治家と報道機関に不信感を抱き、逆に軍隊への信頼度が高いため、全く内情を知らない人からすると、クーデターが起きてもおかしくない印象です。

ここで戦前の歴史をふり返ると、経済不況と国際情勢の悪化にともなって、当時の人々は軍隊に期待を寄せながら、政治家や財界に失望していました。

この歴史を照らし合わせると、デジャヴを感じるかもしれません。

旧軍とは違う組織文化

しかし、自衛隊がクーデターを起こすなど、可能性としてはゼロに近く、現場の隊員たちは言うまでもなく、中央の幹部でさえ考えていません。

旧日本軍ならいざ知らず、自衛隊は戦後日本に染まった組織、民主主義体制を守る軍隊です。同じ軍事組織でありながら、戦前の帝国陸・海軍とは性質が違います。

本来、軍隊は厳格な階級社会であるがうえ、独特の風土が先鋭化につながりやすく、実際に旧日本軍はそうでした。でも、自衛隊は事実上の軍事組織なれど、しっかりと戦後日本の価値観が根付き、急進的な思想が広まる土壌がありません。

戦前の反省をふまえて、自衛隊は政治活動を固く禁じており、市ヶ谷のエリート幹部といえども、政治とは距離を置いてきました。最近、若手の士官が中国大使館に入り込み、大使に直訴しようとした事件がありましたが、これは一個人の衝動的な行動にすぎず、自衛隊全体には波及していません。

旧軍のように同調する動き、同じ思想を共有する「勉強会」はなく、約23万人の巨大組織において、孤立した事案にすぎません。

自衛隊という組織全体で見ると、民主主義を重んじる組織文化の下、政治の都合に振り回されても、文民統制から逸脱することなく、常に立場をわきまえています。

これは当時の政治思想に染まり、干渉を繰り返した旧軍の真逆です。

自衛官といえども、彼らは同じ戦後教育を受けて育ち、一般国民と価値観を共有しています。みんな同じ日本人であって、隊員はその辺の若者と変わりません。夕方5時以降はゲームしたり、アニメを見る普通の人たちです。

これが幹部でも変わらず、たとえ偉い将官クラスであっても、クーデターを起こすような連中はおらず、普通の50代のお父さんたちです。

何度も言うように、彼らも同じ戦後社会の空気を吸い、民主主義と平和を大事する環境で育ったから。

1970年に作家・三島由紀夫が人質をとり、隊員たちに決起の檄を飛ばしても、誰ひとり賛同していません。これが旧日本軍であれば、同調して乗っかったでしょう。

それだけ文民統制の意識が根付き、民主主義の軍隊になった証でした。1970年ですらそうならば、現代はさらに価値観の定着が進み、叛乱なんてあり得ません。

国民の軍隊になった

発足時は戦前の記憶が生々しく残り、前任者(旧軍)の評判が影響するなか、自衛隊は献身をもって猜疑心を取り除き、国民との関係構築に成功しました。

一部から「憲法違反」と存在否定されても、それら反対派を含む国民全体を守り、日頃の防衛任務と災害派遣を通して、地道に信頼を勝ち取りました。平坦な道のりではなかったものの、揺るぎない社会的地位を獲得しています。

頻発する災害では「最後の砦」として働き、住民の救出や生活支援を行いながら、いつも親切に接しています。被災者の国民に寄り添い、温かい食事・風呂を提供したり、親身になって相談に乗る。まさに国民を守る軍隊です。

災害派遣での炊き出し災害派遣での炊き出し(出典:陸上自衛隊)

自衛隊は戦後日本とともに歩み、民主主義を陰で支えてきたからこそ、国民の認めるところになりました。憲法9条の文言にかかわらず、戦後日本で「市民権」を勝ち取り、社会のほぼ全員が存在意義、重要性を認識しています。

民主主義的にいえば、民意と支持を獲得しました。

民主的な価値観を持ち、文民統制の遵守を忘れず、守るべき国民には親しまれる。まさに民主主義の軍隊の理想形態です。

もっと自らの歴史に自信を

ここでひとつ気になるのが、自衛隊の旧軍に対する認識です。

自衛隊自身は旧軍を「リスペクト」はしており、歴史的な結びつきを意識してきました。

どこの駐屯地・基地にも資料館がありますが、そこには自衛隊の展示物とともに、旧軍の史料が見られます。

資料館の規模で変わるとはいえ、展示の割合が「1:1」の場所も多く、先代に対する想いの強さが分かります。

むろん、自衛隊は一部の伝統を受け継ぎ、組織文化と価値観は違えど、両者は歴史的にはつながっています。

事実上の後継者として、旧軍と連続性がある限り、「先祖」への尊敬の念を持ち、その功績を評価するのは当然でしょう。この姿勢自体は平和主義とは矛盾せず、別に民主主義の価値観に反しません。

歴史がつながっている以上、旧軍の話題は避けられないものの、わざわざ保守系の論客を講師に呼び、礼賛に近い講義をさせなくても、自衛官はきちんと歴史を学べます。

旧軍は負の部分が多いのは否めず、保守・右派の主張に耳を傾けるなら、逆の意見にも触れさせたうえ、バランスを取るべきでしょう。

そもそも、そこまで旧軍を意識せずとも、もっと「自衛隊」に自信を持つべきです。自衛隊は発足から70年以上が経ち、すでに旧軍の歴史を超えました。

ところが、長らく日陰で生きてきたからか、分かりやすい「戦績」がないからか、あまり自分たちの歴史に自信を持たず、その反動で旧軍の方に視線が向き、過度に意識している感さえあります。

必要以上に意識しながら、つながりを強調しすぎると、功罪の「罪」にも結びついてしまい、せっかく築き上げた信頼、印象に影響を与えかねません。

たしかに、帝国陸海軍のような戦績はないものの、戦わずして日本の平和を守り抜き、何度も国民を助けてきた戦果はあります。

だからこそ、そこまで旧軍の存在を意識せず、自衛隊としての功績に胸を張り、もっと自分たちのアイデンティティ、長い歴史に自信を深めるべきです。

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