エア・クッション型揚陸艇×3
アメリカは原子力空母や強襲揚陸艦で強力な軍事力を投入できますが、この「戦力投射」をもたらす船舶のうち、風変わりなものとして「モントフォード・ポイント級」遠征移送ドックがあります。
あまり馴染みがなく、外見上はタンカーにしか見えないものの、じつはエア・クッション型の揚陸艇(LCAC)を3隻も運用可能です。
- 基本性能:「モントフォード・ポイント級」
排水量 | 34,500t(基準) |
全 長 | 239m |
全 幅 | 50m |
乗 員 | 33名 |
速 力 | 15ノット(時速28km) |
航続距離 | 17,000km |
搭載艇 | LCAC×3 |
価 格 | 1隻あたり約600億円 |
そもそも遠征移送ドックというのは、戦力投射における即応態勢を目指したコンセプトであり、港湾施設に頼らない「洋上の桟橋」を具現化したものです。
戦争では海兵隊が真っ先に殴り込むなか、アメリカは紛争が起こりそうな地域の近くにあらかじめ兵器や物資を集めておき、すばやく介入できるようにしてきました。
それが「海上事前集積船隊」と呼ばれるもので、装備品などを積んだコンテナ船で構成されます。そして、この事前集積船隊の一翼を担うべく登場したのが、計3隻が就役予定の「モントフォード・ポイント級」です。
予算削減で能力後退
「モントフォード・ポイント級」は民間船に近い設計をしたところ、建造費を抑えて強襲揚陸艦よりはるかに安く仕上がりました。その分、能力はLCAC運用に集約させられており、航空運用能力や戦闘力はありません。
LCACを想定して半潜水式の中央部を持つ遠征移送ドック(出典:アメリカ海軍)
それでも、海に浮かぶ拠点として十分に機能するほか、港湾施設に依存しなくて済むため、展開エリアの選択肢が増えるのみならず、災害派遣でも役立ちます。
ただ、こうした能力は初期構想と比べて半減しました。じつは当初は6隻のLCACを搭載できたり、ほかの艦船から戦車などをそのまま移送できる接続ランプも設けるつもりでした。
その後、いつもの予算削減を喰らい、惜しいことに能力が半分になった形です。
とはいえ、対中国で島嶼戦が予想されるなか、柔軟な運用ができるLCAC空母はかなり高い価値を持ちます。
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