後継なく退役？「はやぶさ型」ミサイル艇は時代遅れなのか

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魚雷艇を置き換えたが

ミサイルと航空機が登場する以前、海戦では大砲と魚雷を使い、後者は砲弾より高価にもかかわらず、喫水線下（水面下の船体下部）に穴を開けながら、相手に致命傷を与えやすく、切り札として重宝されました。

特に魚雷艇は高速で肉薄したあと、大型艦さえも沈められる魚雷を放ち、非常にコスパの良い兵器でした。それは沿岸防衛から偵察、護衛まで担い、経済的余裕がない中小国の貴重な戦力でした。

しかし、第二次世界大戦後にミサイルが本格登場すると、1960年代頃からは魚雷ではなく、対艦ミサイルを積むようになり、魚雷艇からミサイル艇に変身します。

当初は対艦ミサイルの命中率、その実用性が疑問視されたものの、1967年にエジプトのミサイル艇がイスラエルの駆逐艦を撃沈すると、一気に潮目が変わりました。（エイラート事件）。

海自のはやぶさ型ミサイル艇に搭載されている対艦ミサイル（筆者撮影）

こうしてミサイル艇は鮮烈なデビューを飾り、かつての魚雷艇と同様に沿岸域を走り回り、一撃離脱攻撃を仕掛ける兵器になったほか、偵察と警戒監視、特殊部隊の輸送にも使用されました。

海上自衛隊は各国に遅れをとりながらも、1990年代に「1号型ミサイル艇」を配備したものの、就役後に船体の強度不足が判明したため、わずか3隻で打切られました。

この反省点をふまえて、「はやぶさ型」が登場したわけですが、高速戦闘艇としては優れた性能を持ち、現在も日本海をにらむ拠点に配備中です。

「はやぶさ型」は1号型よりは大きく、荒波の日本海を無事に航行すべく、船体強度を高めながら、戦闘指揮所（CIC）や食堂、簡易キッチンを備えました。

ただし、キッチンはIHコンロと電子レンジ、冷蔵庫などしかなく、食事はレトルトと冷凍食品に限られます。それゆえ、最大でも2〜3日しか連続任務に就けず、やはり長期航海には適していません。

一方、船体デザインでは主砲とマストのみならず、手すりにもステルス性を取り入れており、なるべくレーダー反射面積を減らしました。

船体材料は軽量なアルミ合金が多く、ウォーター・ジェット推進で進みながら、最大44ノットの高速航行力を実現しました。その代わり、乗組員は激しい船酔いに悩み、居住性の悪さに拍車をかけていますが。

ウォーター・ジェットポンプで航行（赤丸部分）

攻撃の要は船体後部の対艦ミサイルですが、2〜4発を搭載する仕組みです。前部には1門の76mm速射砲を持ち、任務次第では12.7mm機関銃を設置します。

本来の役割は対艦攻撃とはいえ、その高速機動力は不審船対策にも役立ち、海上保安庁との合同訓練では常連参加者になりました。

さて、「はやぶさ型」は就役から20年が経ち、2032年度までには退役する見通しです。

その後継は建造されず、多機能な「もがみ型護衛艦」に加えて、建造予定の1,900トン級哨戒艦で代替しますが、その背景にはミサイル艇の存在意義が薄れてきた事情もあります。

海保の巡視船との訓練（出典：海上自衛隊）

以前は対艦ミサイルが標準装備ではなく、その迎撃手段も未完成だったため、ミサイル艇には相応の価値がありました。ところが、いまや大多数の艦艇が対艦ミサイルを持ち、防空能力も格段に高まったことから、ミサイル艇の存在価値は低下しました。

高速機動力を活かせば、不審船対策と警戒監視には使えますが、同じ働きを「もがみ型」と新型哨戒艦ができるうえ、航続距離や居住性、外洋航行性ではかないません。

「多用途能力」が求められる時代のなか、特化型のミサイル艇は持て余すだけになり、維持費をかけてまで使う理由がなくなりました。