空飛ぶガソリンスタンド、空中給油機の仕組み

航空機
この記事は約3分で読めます。

現代航空戦では超重要な機体

いくら高性能戦闘機と優秀なパイロットを揃えても、戦闘空域での活動時間が短ければ本領を発揮できません。そして、燃費が悪い戦闘機にとって、この滞空時間の確保という課題は常に付きまといます。

そこで、飛行中に他の航空機から燃料補給を受ける「空中給油」という解決策が編み出されたわけですが、この構想は航空黎明期の1920年代から存在していました。

第二次世界大戦後はスペースに余裕のある輸送機や旅客機を改造した空中給油機が本格登場して、航空燃料(Kerosene)の「K」に輸送機(Cargo Plane)を指す「C」を足して「KC-〇〇」と呼ばれるようになりました。

空中給油機を運用すれば、一旦基地に戻ることなく、そのまま航続距離と滞空時間を延伸できるので、残量燃料に対する懸念が軽減されます。さらに、あえて燃料を抑制して、その分より多くのミサイルを積んで出撃することも可能です。

このように1機あたりの作戦時間を延ばしたり、兵器搭載量を増やすなど、少ない戦力を最大限発揮できるものの、実際にはパイロットの疲労も考慮せねばならず、連続滞空時間は延伸しても8時間あたりが限界でしょう。

それでも、基地との往復時間を省けるだけでも十分な効率化であり、空中給油機は早期警戒管制機とともに優位性確保に重要な役割を果たします。

それぞれ長所・短所がある2つの給油方式

すでに当たり前となった空中給油には、2つの手法があります。

ひとつが「フライング・ブーム方式」というもので、これは空中給油機からブームという燃料パイプを伸ばして、給油を受ける側に差し込む方法。

この方式では空中給油機がほとんどの操作を行うため、給油される側は位置を保つだけでよく、一度に多くの燃料を供給できることから、爆撃機などの大型機にも適した方法です。

フライング・ブーム(赤丸)を使って戦闘機に給油する空中給油機(出典:アメリカ空軍)

もう一方の「プローブ・アンド・ドローグ」では、空中給油機が伸ばしたホースの先端に、給油を受ける側が燃料パイプを差し込みます。

こちらのメリットはヘリコプターにも対応しているうえ、ホースを増設すれば、複数機に対して同時供給できる点です。

ただし、この方式ではフライング・ブーム方式よりも細かい調整が必要となり、給油を受ける側は高度な技量が求められます。

プローブ・アンド・ドローグ方式(出典:アメリカ空軍)

このように2つの方式にはそれぞれ一長一短があるわけですが、まとめると以下のようになります。

◇フライング・ブーム方式
・大型機への給油に向いている
・ブーム操作員以外にとっては比較的容易
・設備が大きく、改造が難しい

◇プローブ・アンド・ドローグ
・戦闘機やヘリコプターへの給油に向いている
・給油を受ける側も十分な技量が必要
・比較的簡単に改造できる

ちなみに、空自はフライング・ブーム方式の「KC-767」、そしてプローブ・アンド・ドローグ方式の「KC-130H」をそれぞれ運用しているものの、有事を見据えた戦力強化の一環で、両方式に対応した「KC-46A」を6機を購入予定です。

コメント