威力偵察する車両
「偵察」では相手にさとられず、隠密行動することが多いなか、あえて交戦して敵の戦力状況や能力をつかみ、次の作戦に役立てる「威力偵察」もあります。
威力偵察はある程度は戦う以上、それ相応の火力と防護力が欠かせず、陸上自衛隊では「87式偵察警戒車」を用いてきました。
- 基本性能：87式偵察警戒車
| 重 量 | 15t |
| 全 長 | 5.99m |
| 全 幅 | 2.48t |
| 全 高 | 2.8m |
| 乗 員 | 5名 |
| 速 度 | 時速100km |
| 航続距離 | 約500km |
| 兵 装 | 25mm機関砲×1 7.62mm機関銃×1 |
| 価 格 | 1両あたり約3億円 |
陸自では長らく偵察用のオートバイ、小型トラックを使っていたものの、非装甲車両は威力偵察には向かず、火力・防御力を高めた車両が必要でした。
この構想が出た1970〜80年代といえば、ちょうど全国の道路整備が急速に進み、路上走行に適した装輪式（タイヤ式）に注目が集まり、結果的に87式偵察警戒車が開発されました。
これは日本初の偵察戦闘車（RCV）ですが、82式指揮通信車を手がけた小松製作所が生産を担い、部品の共通化で開発コストを抑えました。
6つの大型タイヤは銃弾に耐えられるほか、後ろの4つを駆動させる「4WD」により、時速100kmの路上機動性を発揮できます。非舗装路では「6WD」に切り替わり、不整地でも問題なく走れるようになりました。
そして、通常は車長と運転手、射撃手、偵察要員（2名）が乗り込み、偵察装備の地上レーダーや暗視装置、潜望鏡、光学カメラを使いながら、そのまま車外の様子を確認します。
良い性能だが、後継は未定
主武装には25mm機関砲（有効射程：3km）を選び、通常は約400発を装填しておきながら、対空射撃にも使える汎用性を確保しました。
これが非装甲車両、対人攻撃になると、十分すぎるほどの威力を誇り、貴重な機甲火力として運用されてきました。また、状況次第では84mm無反動砲などを持ち込み、自衛能力と火力支援能力を増強します。
一方、車両そのものは防弾鋼板で装甲化を図り、小銃弾や砲弾の破片に耐えられるため、小型トラックと比較して防護力は飛躍しました。さはさりながら、本格的な交戦には向いておらず、敵の戦車と遭遇でもすれば、退散するしかありません。
偵察戦闘車としての役割を考えると、87式偵察警戒車に大きな欠点はなく、計113両を生産・調達したあと、全国各地の偵察隊に配備されました。
ところが、現在は偵察装備の陳腐化が進み、「25式偵察警戒車」への更新が予定されています。25式RCVの量産にともなって、87式は順次退役するものの、装甲車として使える点は変わらず、少しもったいない感じは否めません。
装甲車である以上、防護力では非装甲車両に勝り、トラックを投入するよりは安全です。そもそも、陸自では装甲車が足りておらず、旧式化しているとはいえども、補完戦力ぐらいには使えるでしょう。
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