ミニ・ミサイル防衛を担うC-RAMとは何か?

夜間に射撃する機関砲 アメリカ
この記事は約3分で読めます。

ロケット弾・砲弾を迎撃

アメリカは同時多発テロ事件を受けて、20年以上の対テロ戦争に突っ込み、非対称戦でロケット弾や迫撃砲の脅威に直面しました。

弾道ミサイルにも対処できる以上、ロケット弾・砲弾の相手は容易かと思いきや、小さい目標はレーダーで捕捉しづらいほか、射程の短さが反応時間を制約しました。

それゆえ、米軍がアフガニスタンのみならず、イラクでも対ゲリラ戦に陥ったとき、近距離で即応対処できる兵器が必要になり、そこで誕生したのが「C-RAM」という防空システムです。これは「Counter-Rocket, Artillery and Mortar」の略称であって、日本語では対ロケット弾、砲弾、迫撃砲弾という意味になります。

C-RAMは特定の兵器を指しておらず、ロケット弾などの早期探知を行い、それを迎撃するシステム全体の総称です。

たとえば、20mm CIWSの陸上車載型、「LPWS(センチュリオン)」がありますが、これはC-RAMを構成する兵器の一部にすぎず、ほかにも「MANTIS防空システム」、「ABRAHAMミサイル・システム」、あの有名な「アイアン・ドーム」が含まれています。

ちなみに、LPWSをそのままC-RAMと呼び、両者を同一視する傾向があるものの、厳密には違うわけです。

C-RAMの「LPWSセンチュリオン」(出典:アメリカ軍)

その代表的存在であるLPWSをみると、外見と基本性能は通常型と大差なく、4,500発/分の発射速度も変わりません。

ただし、対砲兵レーダーを搭載したり、20mm弾に自爆機能を与えるなど、一部は改良されています。また、目標の探知後は未来位置を予測して、警告できるようになりました。

実戦経験でいえば、アフガニスタンで撃墜戦果をあげており、撤退時にもロケット弾を迎え撃ち、最後の脱出口であるカブール空港を守りました。

まとめると、C-RAMは低脅威の飛翔体を迎撃するべく、既存兵器の応用型(LPWS)から新型ミサイルまで組み込み、「ミニ・ミサイル防衛」を担うシステムといえるでしょう。また、最近は自爆ドローンが脅威になるなか、C-RAMも対ドローン戦にも使えると期待されています。

コスパ重視の防空兵器

最大の魅力は「費用対効果」であって、LPWSのようにCIWSをトラックに積み、移動式の対空機関砲として使えば、開発費と迎撃コストを抑えられます。

そもそも、防空には費用対効果の問題がつきまとい、安いロケット弾や砲弾に対して、高価なミサイルを使うのは割に合いません。

ロケット弾と迫撃砲弾は安いがゆえに、簡単に大量入手できてしまい、命中率の低さを「数」で補ってきました。命中精度は低いといえども、それなりの被害は避けられず、迎撃側には厄介すぎる兵器です。

このような兵器を比較的安く、即応的に迎撃しながら、柔軟に対処するのがC-RAMの役目です。

当たらない?ファランクスCIWSの迎撃率・命中精度について
船を守る最終手段 各国の軍艦にある兵装のうち、ほぼ共通して見られるのがCIWS(Close In Weapon System)、通称「シー...

コメント

タイトルとURLをコピーしました