機関砲を含む防空システム
現代地上戦では自爆ドローンが猛威をふるい、優れた費用対効果をもたらすなか、迎撃側はコスト面で不利な戦いを強いられてきました。安価なドローンに対して、高性能ミサイルを使うのは割に合わず、もっと安く撃墜できるならば、それに越したことはありません。
この迎撃コストを下げるべく、ドイツのラインメタル社は新しい兵器に取り組み、「SkyNex(スカイネックス)」というシステムを開発しました。
ラインメタル社といえば、レオパルト2戦車の120mm砲の製造を担い、過去にもスカイシールドなどの防空兵器を作ってきました。スカイネックスは同シリーズの最新版にあたり、対空ミサイルと機関砲、レーザー兵器など、複数の防空兵器を組み合わせながら、それらを統合運用するシステムです。
また、レーダーは約30〜50kmの探知範囲を持ち、多機能センサーと連動しながら、あらゆる空中目標に対応しました。そして、コントロール・システム(スカイマスター)を使い、これら兵器と関連装備を一元管理する仕組みです。
前述のとおり、いろんな防空兵器を組み合わせたものですが、特に注目されているのが、トラック搭載型の「Mk3」という35mm対空機関砲です。むしろ、Mk3の印象があまりに強く、「スカイネックス=Mk3」のイメージが浸透しました。
この機関砲は有効射程4km、1,000発/分の発射速度を誇り、高性能なXバンドレーダーにより、自動追尾・識別能力、電波妨害機能を備えました。それはミサイルとドローンに限らず、砲弾やロケット弾などの脅威も含み、柔軟な対処能力を確保しました。
コスパが良い防空兵器
スカイネックスはシステム自体ではなく、新型機関砲(Mk3)が注目されがちとはいえ、複数の防空兵器のセンサーを統合しながら、目標に応じた最適手段を選べるのも大きな利点です。
スカイマスターが脅威度に基づき、適切な防空兵器を自動的に選び、そのまま連接するため、拠点防空を飛躍的に効率化しました。
Mk3のほかにも、けん引式の35mm連装機関砲、指向性レーザー兵器、短距離ミサイルのスカイナイトがあって、スカイナイトは射程10kmではあるものの、最大60発が発射機に収まり、飽和攻撃への対応力を引き上げています。
すなわち、スカイネックスは「ミニ・ミサイル防衛」を担い、迫撃砲弾などの低脅威目標までカバーする点では、アメリカの「C-RAM防空システム」に似ています。しかし、複数の兵器を組み合わせる利点を考えると、スカイネックスの方が柔軟性が高く、選択の自由度が広いといえるでしょう。
なによりも、高性能にもかかわらず、迎撃コストが安いのが最大の魅力です。
初期費用こそワンセット(全装備)で約100億円するものの、1回あたりの迎撃コストは安く済み、最終的なコストパフォーマンスは優れています。
実戦経験についてみると、ドイツがウクライナ支援の一環として、少なくとも2セットを供与しており、すでに活躍中のゲパルト対空戦車とともに、防空戦で戦果をあげてきました。
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