二重弾頭を使った貫通力
ロシアの侵略を受けたウクライナは、西側諸国に対してあらゆる軍事支援を求めてきましたが、イギリスが空中発射型の「ストーム・シャドウ」を提供したおかげで、長距離対地ミサイルの供与が解禁されました。
こうしたなか、ドイツは再三の要請にもかかわらず、自国が持っている「KEPD350 タウルス巡航ミサイル」の供与をしぶってきました。
ストーム・シャドルの次として期待されているこの兵器は、どのようなミサイルなのでしょうか?
- 基本性能:KEPD350タウルス巡航ミサイル
重 量 | 1,400kg |
全 長 | 5m |
直 径 | 1.015m |
速 度 | マッハ0.95(時速1,170km) |
射 程 | 500km以上 |
価 格 | 1発あたり約1.4億円 |
ドイツとスウェーデンが共同開発したタウルス巡航ミサイルは、一定のステルス性と500km以上の射程距離を持ち、約480kgもある二重弾頭は地下陣地も破壊できます。
その高い貫通能力は司令部や弾薬庫のような重要拠点への攻撃に向いており、もしウクライナに提供されれば、ロシア軍の後方安全圏は大きく後退せざるをえません。
使い方については、あらかじめ目標位置と飛行経路を入力しておき、あとはタウルス自身が赤外線画像や地形照合能力を用いて低空飛行します。また、誤爆リスクが高いときは指定地点に墜落させるなど、巻き添え被害にも配慮した形です。
供与しないのは恐いから
この空中発射型の対地ミサイルは、ドイツ以外ではスペインと韓国が購入したものの、共同開発国のスウェーデンは導入しておらず、主力戦闘機「サーブ39 グリペン」で実証試験をしたのみでした。
一方、タウルスを熱望しているウクライナ側は、ストーム・シャドウと同じように既存の空軍機を改修すれば使えるはずです。そして、入手すればロシア側の後方拠点をさらに脅かせるため、優位性確保につながるのは間違いありません。
それでもドイツ側が二の足を踏んでいるのは、この期に及んでもロシアに対する過度な刺激を恐れているから。ロシアは当初から核の威嚇を使ってNATO諸国をけん制してきましたが、その抑止効果がここでも働いているわけです。
確かに、タウルスの射程はストーム・シャドウやATACMSよりも長く、その意味ではエスカレーションの段階をワンステップ上げるといえます。
しかし、こうしたロシアの脅しを受けながらも、西側諸国は今まで主力戦車から戦闘機までを供与していて、その度にウクライナは確実な戦果をあげてきました。
ウクライナが長距離ミサイルをすでに使ってロシア側に打撃を与えているなか、最後のハードルだった短距離弾道弾「ATACMS」までもが到着済みです。
ここにタウルスが加わったところでドイツが恐れているほどの刺激にはならず、「レオパルト2戦車」などの高性能兵器を提供している時点で、ロシアとの敵対関係は免れません。
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