自律航行技術を試す実験船
自律飛行する無人機が各国で活躍するなか、水上船舶でも無人化の動きが加速しています。
この分野でも先行するアメリカは、水上航行における自律技術を試す計画「ゴースト・フリート・オーバーロード」を運用中で、その中核を担うのが「レンジャー」をはじめとする無人水上艦(USV)です。
- 基本性能:USV「レンジャー」
排水量 | 不明 |
全 長 | 59m |
全 幅 | 10m |
速 力 | 35ノット(時速65km) |
航続距離 | 8,000km以上 |
乗 員 | 6名 |
輸送能力 | 6m級コンテナ×2 10m級コンテナ×4 |
建造費 | 不明 |
無人航行計画の一環として米海軍が運用する「レンジャー」は、試験評価や非常時のために6名の乗員がいるものの、船舶機能のほとんどが自動化・無人化されています。
主な任務は無人航行技術の試験と評価を行い、有人艦船との統合運用を目指すうえでの課題を洗い出すこと。
そのため、小さな船体には無線と衛星通信用の最新機器、レーダー、多数のセンサーを搭載して強力な通信能力を確保しました。
「レンジャー」以外にも、「ノマド」「マリナー」「ヴァンガード」の同型艦が建造され、別の無人水上艦である「シーハンター級」とともに米海軍の無人艦隊を構成しています。
小さいながらイージスシステムも?
「レンジャー級」無人水上艦は、2021年にはパナマ運河を経由しての米西海岸までの8,000km超の航海に成功しており、行程の「98%」で無人自律航行を実施しました。
その後、2023年には太平洋を横断して日本に来たことが話題となり、横須賀を母校とする米海軍第7艦隊との演習にも参加しました。
航行する「レンジャー(奥)」と「マリナー(手前)」(出典:アメリカ海軍)
すでに長期航海に耐えうるだけの性能、自律航行能力の高さを証明したこの無人水上艦は、コンテナを搭載する輸送船としての一面も持ちます。
そして、このコンテナには航海に必要なシステムが入っている一方、実はイージス・システムも搭載しているので、味方のイージス艦と連携しながらミサイルを発射できます。
つまり、小さな無人艦でありながらイージス艦でもあるのです。
中国のA2AD戦略がもたらす厳しい環境に対して、アメリカは分散型の戦いを志向しており、こうした無人化・自律化の新技術を統合運用することで優位性を獲得します。
見た目によらず、高い能力を誇るこの無人水上艦は、今後も試験を繰り返しながら、将来的に欠かせない自律技術の発展に寄与します。
コメント