浜松基地の防空教育部隊
北朝鮮のミサイル脅威が高まるにつれて、日本を守るイージス艦、ペトリオット・ミサイル（PAC-3）の重要性が増してきました。特にPAC-3は「最後の砦」にあたり、その能力に日本の最終的な命運を委ねています。
PAC-3は航空自衛隊の高射部隊が運用しており、現在は6個高射群、24個高射隊という防空体制です。そのうち、浜松基地には最精鋭とされる「高射教導群」が配置されています。
教導群は他の高射部隊に対して教育支援を行い、彼らの練度を高めるのが役目です。他部隊を鍛えるといえば、小松基地の「アグレッサー（飛行教導群）」が有名ですが、高射教導群はこのPAC-3版にあたります。
そのため、新しいミサイルやシステムが入れば、真っ先にその性能を研究・評価しながら、他部隊向けにマニュアル化したり、実習訓練を通して慣れさせます。
高射教導群は主に第1教導隊、第2教導隊に分かれており、前者が全体的な防空指揮を、後者が実際の発射現場における教育担当です。たとえば、アメリカで実弾射撃訓練を行うとき、第2教導隊は発射チームに随行しながら、その訓練支援を行います。
日本ではPAC-3の実弾射撃ができず、広大なアメリカの演習場で行うしかありません。むろん、通常のイメージ・トレーニングと実弾射撃は全く異なり、高射部隊にとっては技能を実地に試せる貴重すぎる機会です。
異国の地で彼らが訓練に専念できるよう、高射教導群は米軍との調整を担い、現地滞在時のアシスト役となります。
また、基地防空隊への教育訓練を行うべく、千歳基地（北海道）には別の教導隊が配備されています。この「基地防空教導隊」は近距離向けの地対空ミサイルを使い、想定目標も弾道ミサイルなどではなく、主に巡航ミサイルや敵航空機です。
教えられるだけの強さ
空自の高射部隊といえば、実弾訓練において高い命中率を誇り、「弾職人」というあだ名に恥じぬ腕前を披露してきました。高射教導群は彼らを教えられるだけの実力を持ち、日本最強の高射部隊といえます。
各地の防空職人を教える以上、自分たちの技量も常に進化せねばならず、日頃からその技量を磨いています。
それは単なる命中率にとどまらず、防空指揮の的確さ、機動展開の速さにおよび、総合的な高い能力が教導群の強みです。いくら現場の命中率が高くても、後方の指揮能力が拙かったり、移動展開が遅ければ、せっかくの腕前を発揮できません。
つまり、高射教導群は兵器の性能にかかわらず、それを操る「人」を鍛えながら、チームの総合能力を引き上げるわけです。
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