自衛隊の「OH-6」観測ヘリの役割とその後継について

自衛隊のOH-6Dヘリ 陸上自衛隊
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高い汎用性、運動性能

陸上自衛隊が活動するうえで、上空からの航空偵察は欠かせず、そのために観測ヘリコプターを運用してきました。現在はドローンの登場を受けて、こうしたヘリはお役御免になりつつあるなか、つい最近まで使われていたのが「OH-6」になります。

これは1969年の導入以降、各方面での航空偵察を担い、「OH-6J」「OH-6D」の2種類を合わせると、計325機が調達されました。

  • 基本性能:OH-6観測ヘリ
全 長 9.54m
全 幅 8.05m
全 高 2.73m
乗 員 操縦1名+同乗3名
速 度 最大時速280km
航続距離 約500km
高 度 約4,800m

OH-6はアメリカの小型ヘリですが、すばらしい飛行性能を誇るとともに、無駄なものを排除したところ、設計的には一種の完成形になりました。卵型の機体は空気抵抗が少なく、ひっくり返っても潰れないなど、見た目によらず頑丈なのが特徴です。

アメリカでは「空中騎兵」のコンセプトの下、本来の偵察任務はもちろん、人員・物資の輸送から対地攻撃まで行い、汎用性の高いヘリとして重宝されました。しかも、その機体は改造しやすく、小型で探知されづらいことから、特殊部隊用から電子戦型にいたるまで、複数の派生型が生まれています。

シリーズ全体で考えると、世界30カ国以上で採用されており、累計生産数は6,000機を超えます。ただ、アメリカはベトナム戦争だけで960機以上を失い、損耗の激しい機体であったのも事実です。

自衛隊のOH-6DヘリOH-6Dヘリ(出典:陸上自衛隊)

日本では川崎重工業がライセンス生産を受け持ち、観測任務や基地間の連絡に使いながら、多くの災害派遣現場に投入されてきました。

なお、1978年からは「D型」の生産が始まり、エンジンの出力アップに加えて、ローターを4枚から5枚に増やしたり、尾翼部分をT字型に変えるなど、さらに運動性能を伸ばしています。このD型はのちに赤外線暗視装置を組み込み、暗視ゴーグルにも対応しました。

後継不足で延命に

さて、本来はOH-1が後継になるべきところ、高コストのせいで調達が進まず、OH-6の退役は先延ばしになりました。

旧式であることを除けば、操縦性と運動性能のよさは変わらず、2000年代には練習機にもなり、航空学校でパイロット養成に貢献しています。小型・軽量な機体は練習にふさわしく、宙返りさえできる機動性はOH-1に通ずる点がありました。

しかし、さすがに機体の老朽化を無視できなくなり、ようやく2020年に退役しました。

海自・海保でも活躍

あまり知られていませんが、海上自衛隊もOH-6を使っていた歴史を持ち、まずは南極観測船「しらせ」に載せるべく、1983年に1機の「OH-6D」を購入しました。

その後、練習機として14機ほどを買い、教育派生型の「OH-6DA」に引き継ぎながらも、2016年まで同シリーズを運用しました。

また、1970年には海上保安庁も2機を導入しており、アメリカ統治の沖縄で急患輸送で飛びつつ、1993年まで現役を続けました。

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