すでにアジア最強。
中国が経済大国になるにつれて、その軍事力も成長の一途をたどり、特に海・空戦力の増強ぶりはすさまじいです。
中国海軍といえば、2000年代までは小型艦艇と旧式艦が多く、いわゆる「沿岸海軍」でした。アメリカに挑む能力などなく、90年代の台湾危機で米海軍が出てきた際、彼らは何もできませんでした。
しかし、現在は以下のような陣容になりました。
- 空母×3隻(4隻目を建造中)
- 駆逐艦×50隻
- フリゲート×52隻
- コルベット×75隻
- ミサイル艇×150隻
- 原子力潜水艦×16隻
- 通常動力型潜水艦×48隻
- 強襲揚陸艦×4隻
- ドック型揚陸艦×8隻
- 掃海艦艇×36隻
- 補給艦艇×19隻
戦闘艦艇は約400隻を超えており、日本を凌駕するどころか、数ではアメリカすら逆転しました。アメリカの悲惨な造船能力に対して、中国側の勢いは止まっておらず、毎年5〜6隻もの主力艦を量産しています。
その資金力と開発能力、計画実行力は恐るべきもので、まさに世界一の速さで進行中です。能力面でも近代化と練度向上が進み、増え続ける艦艇数と合わせると、もはやアジア最強と断言していいでしょう。
少なくとも、複数の空母機動部隊を運用でき、揚陸能力の整備に取り組むなど、外洋海軍への成長を遂げています。アメリカを除けば、イギリス、フランス、ロシアとともに、世界有数の外洋海軍の仲間に入り、規模的には英仏露を余裕で超えました。
いまだ兵站補給、戦力投射の点で課題が残るとはいえ、ここ15年での改善ぶりはすさまじく、解消されるのは時間の問題でしょう。
中国海軍の大艦隊
一方、日本の海上自衛隊も世界屈指の戦力を持ち、帝国海軍譲りの高い練度を維持してきました。世界を見渡しても、4つの機動艦隊、54隻の水上戦闘艦、22隻の潜水艦、70機以上の哨戒機群はトップクラスの海軍力です。
充実した正面戦力に加えて、涙ぐましい努力による稼働率を考えれば、海自は世界的には異例レベルになります。軽空母しかないとはいえ、ヨーロッパ諸国と比較した場合、あのイギリス海軍すら上回る戦力です。
それでも、東アジアでは異常な軍拡競争が進み、海自の戦力をもってしても、中国にはおよびません。もはや単独では対抗できず、米豪英比などと連携しながら、抑え込むのがやっとです。
空母機動部隊を保有
さて、中国は空母保有から15年以上が経ち、現在は3隻が就役済み、4隻目が建造中です。将来的には6隻体制を実現して、中国沿岸部から南シナ海、西太平洋にかけての海上優勢を目指します。
これらは台湾侵攻時の米軍撃退、あるいは介入阻止を目的としており、以前解説した「A2AD戦略」の一環です。

台湾に侵攻する場合、空母の保有は必要条件ではなく、中国本土からの航空支援で済みます。問題は米軍の介入ですが、A2ADの本質は「非対称戦」であるゆえ、正面からの空母対決は想定していません。
ただ、空母艦隊は抑止と陽動、戦力分散には役立ち、その有無は作戦全体に大きな影響を与えます。アメリカの視点に立つと、中国空母の存在は計算の複雑化を招き、作戦上の支障なのは間違いありません。
西太平洋や日本近海に繰り出せば、日米はそちらにも注力せざるを得ず、その分だけ台湾方面の戦力が削がれます。逆に中国側は空母で日米を引きつけておき、その間に侵攻を有利に進めたい算段です。
このような構想の下、2010年代を通してノウハウを積み重ね、国産空母の建造能力も確立させました。空母の建造と運用には時間がかかり、空母打撃群をそろえたとしても、5〜10年は訓練せねばなりません。
いまだ発展途上ではあるものの、その習熟度は着実に高まっており、空母の安定運用と戦力化は達成しました。10〜15年前とは違って、もう西太平洋は米海軍の独壇場ではなく、中国はアメリカの空母打撃群に対して、ある程度は対抗できるようになりました。
アメリカの力の源泉といえば、11〜12隻の原子力空母が率いる打撃群ですが、同国の世界戦略をふまえると、一定の戦力は大西洋と中東に置かねばならず、どうしても太平洋には全振りできません。
対する中国は自国周辺に集中できるため、アメリカの3〜4割の戦力を整備すればよく、それだけで十分に対抗可能な状態です。現に中国は6隻体制の目標を掲げるも、さらなる拡張計画は浮上していません(現時点では)。
アメリカが太平洋に全集中できない以上、すでに西太平洋ではタイミング的、あるいは局地的に中国の戦力が上回り、そろそろ空母戦力でも似た状況になります。
国産空母の「福建」
たとえ実績では米海軍におよばずとも、空母打撃群を運用している事実は変わらず、その重大性と脅威は軽視できません。
当初は旧ソ連の旧式空母を買い、練習空母(遼寧)として使っていました。その後、初の国産空母「山東」をつくり、運用面での成長を遂げながらも、技術的な見地でいえば、スキージャンプ方式から脱却できないなど、まだ発展の余地はありました。
そして、「福建」では電磁式カタパルトを組み込み、実際の性能は議論の余地があれども、3隻目にしてアメリカの最新型に追いつき、すさまじい技術的進歩を見せました。
運用面では早期警戒機だけではなく、ステルス艦上戦闘機すら配備が始まり、こちらも驚異的なペースで進んでいます。
日本も「いずも型」の空母化改修を行い、軽空母として運用予定ですが、経験値では先行する中国が勝り、ノウハウで大きく出遅れているどころか、財政的にも追いつくのは不可能でしょう。
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