空母艦隊も!インド海軍の強さと目指すところは?

インド海軍の艦隊 外国
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2035年に200隻体制へ

世界では中国海軍の大拡張が目立ち、アメリカ海軍に肉薄する勢いのなか、密かに海軍力を増強しているのがインドです。人口14.3億のインドといえば、世界最大の民主主義国家であって、中国とともに次の超大国の候補になります。

ところが、中国の急成長ぶりに比較すると、インドは出遅れている感が否めず、それは軍事面でも同じでした。

それでもなお、インド海軍は着実に成長を遂げており、現時点の戦力は以下のとおりです。

  • 空母×2
  • 駆逐艦×14
  • フリゲート×14
  • コルベット×18
  • 哨戒艦×135
  • 補給艦×4
  • 潜水艦×19(2隻は原子力)

総艦艇数は約150隻にのぼり、その規模は世界第5位、総合的には世界7位の海軍になるも、中国海軍の約400隻にはおよびません。

しかし、現在は50隻近くが建造中であって、2035年までに200隻体制を目指します。中国と同じく空母艦隊に力を注ぎ、以前は外国から中古を買っていたところ、2022年には初の国産空母を就役させました。

いま使われている2隻のうち、1隻は旧ソ連製の「ヴィクラマーディティヤ」、もう一方が国産の「ヴィクラント」ですが、どちらも改装と建造段階で紆余曲折が起こり、計画より大幅に遅れて登場しました。

両方ともスキージャンプ台を使うなど、フル規格の正規空母とまではいえず、艦載機の性能・信頼性の問題も加わり、なかなか安定的な運用をできていません。

中国も最初は旧ソ連製に始まり、続く2隻目で国産空母を就役させたあと、3隻目でスキージャンプ台から卒業しました。その間に艦載機と各装置の国産化を行い、現在は複数の空母艦隊を運用しています。

ほぼ同じ経歴にもかかわらず、インドは中国に1〜2歩は遅れており、特に船体以外の国産化に苦戦中です。結局のところ、艦載機にはフランスのラファール戦闘機を選び、一応は空母艦隊を編成しているものの、運用面での課題はたくさん残っています。

インド海軍の艦隊インド海軍の陣容

ただ、インドでは3隻目の空母計画が進み、ここでようやくカタパルト式に変わり、フルスペックの国産空母になるでしょう。

そして、駆逐艦とフリゲートでも国産化に取り組み、潜水艦も外国製からの脱却を図るべく、初の国産の原子力潜水艦を建造中です。

このまま艦隊整備が順調に進めば、インド洋はインド海軍の支配下に入り、戦時には中国海軍の侵入を防いだり、マラッカ海峡より東に追い払うと思われます。

インド洋の海上優勢を握る

では、インド海軍の目指すものは何か?

それはインド洋の海上優勢の確保です。

まず、インドの主敵は隣国のパキスタンであって、両者は事実上の核保有国でありながら、係争地域のカシミールで衝突してきました。建国以来の宿敵関係にあるなか、パキスタンが陸続きの隣国である以上、その出番は主に陸軍・空軍に限られていました。

ところが、パキスタンは中国と強い友好関係を結び、その支援で軍の近代化を進めています。さらに、アメリカは2001年の同時多発テロを受けて、対タリバンの協力目的でパキスタンに近づき、代わりに一部の高性能兵器を売却しました。

アフガニスタンからの撤退により、アメリカとの関係は希薄になったものの、中国との関係強化は変わらず続き、パキスタン海軍の主力駆逐艦は中国製です。

インドとパキスタンの海軍を比べると、両者は天と地ほどの差があるとはいえ、中国海軍が出てくる可能性がある限り、インドとしては海上優勢を確保せねばなりません。

また、インド洋の海上優勢を握れば、対パキスタン戦ではとても役立ち、パキスタンの沿岸部を攻撃したり、海上封鎖を敷いて物流を停止できます。陸路の支援ルートはあれども、海上経由での中国の軍事支援を遮断すると、全体の戦局はインドに傾くでしょう。

インド海軍の関心領域

むろん、インド洋は自分の「庭」にあたり、そこに他国の海軍がいるのは好ましくなく、自分の安全圏(勢力圏)を確保する狙いもあります。

インド洋の面積・深度を考えると、核兵器搭載の原子力潜水艦を隠しながら、反撃能力を温存するうえで都合がよく、同海域は核抑止の観点でも極めて重要です。だからこそ外国勢力を取り除き、「デリーの湖」を目指すしかありません。

ここは中国視点の南シナ海に近く、インドも同じ核保有国・地域大国である以上、目指す道が重なるのは自然でしょう。

他地域には興味ない?

一方、インドは伝統的な非同盟・中立の立場を貫き、自国周辺の南アジアはともかく、あまり他地域には関心がありません。

それゆえ、このまま艦隊整備を進めても、活動範囲はインド洋外には広がらず、有事で来援する可能性は低いです。

最近は日印の安保協力、クワッドの共同訓練を通して、インド海軍の来日は増えていますが、内容的には準同盟レベルには届かず、関係深化には限界があります(以下の記事参照)。

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オーストラリア、イギリスの積極性に比べると、いまひとつインドは「やる気」がなく、インドの空母艦隊が東アジアに進出したり、日本に入港する光景は考えづらいです。

インドの関心領域はマラッカ以西・紅海以東になり、インドが台湾有事に関与するなど、こちらの一方的な願望にすぎません。

ロシアがウクライナに侵攻した際、インドは対ロシアの経済制裁にすら加わらず、逆にロシア産の石油を安値で買いたたき、ロシア寄りの中立姿勢を見せました。この姿勢からも分かるとおり、彼らはリアリストの狡猾的な側面が強く、台湾有事での援助は期待できません。

たとえ複数の空母艦隊を運用できても、それはインド洋における優勢確保に使い、地域外への派遣は控えるはずです。

日本にとっての利点

台湾有事で期待できずとも、日本としてはインドを敵に回す理由はなく、シーレーン保護の必要性をふまえると、インド海軍の増強は歓迎すべき傾向です。

日本のシーレーンはインド洋を通り、そこを敵性勢力が影響下に置いたり、出没するのを防がねばなりません。

インドは同盟国ではないとはいえ、日本とは長らく友好関係を結び、少なくとも敵性国家ではありません。最近は両国の安保関係が深まり、準同盟までは難しいながらも、かつての「協商」ぐらいは目指せるはずです。

日本のシーレーン保護をふまえれば、中国がインド洋を抑えるよりは好ましく、むしろ友好国のインドに抑えてもらい、その分だけ対中国の正面戦線に専念できます。

インド海軍の艦隊インド海軍の空母艦隊

なお、中国もシーレーンがインド洋を通るため、同海域がインド海軍の支配下に入ると、かえって中国の海上輸送路が脅かされる形です。

中印は明確な敵対関係ではないにせよ、その関係は友好レベルとまではいえず、シーレーンを託したいはずがありません。

「敵の敵は味方」の理論に基づくと、インドの艦隊計画は日本には害がなく、逆に中国の不安材料になるだけです。この一点に限っても、日本の戦略上はメリットを生み、対中国で間接的にアシストしてくれます。

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