アメリカに単独で対抗
ここ30年の中国をふり返ると、発展途上国から世界2位の大国、アジアNo.1の地位まで登り、めざましい急成長を遂げました。
GDPでは日本を2010年に抜いたあと、いまやその差は4.5倍まで広がり、力関係が完全に逆転しました。いまは1980年代の日本のように、アメリカの背中を追いかけており、GDPはアメリカの6割に達しています。
その豊富な経済力を軍事に注ぎ込み、高い計画実行力を組み合わせると、アジア最強の軍事大国の誕生です。
日本のライバル視をよそに、中国はアメリカを経済・軍事で追い、現在の日本など眼中にありません。
いずれアメリカを経済で抜き去り、軍事的にも単独で対抗可能になれば、アメリカの意向に沿わずとも、好き勝手に動けるようになります。
この戦略的自律性に基づいて、アメリカにふり回されることなく、自らの目標に向けて突き進み、世界屈指の大国になるわけです。
では、彼らはどこを目指しているのか?
ひと言で説明すると、自国を守るための安全圏を築き、大国としての威信が欲しいけど、大国としての責任は避けたい。これが中国の本音です。
優先目標:台湾統一
まず、以前の記事で解説したとおり、目下の最大目標は「台湾統一」です。
中国共産党の考えによると、中国の広大すぎる土地、13億の民を支配するにあたって、共産党以外では統治できず、安定と繁栄をもたらせません。
このような認識に基づいて、中国共産党は自らの正当性を保ち、社会秩序と経済成長を実現してきました。
ところが、台湾は同じ民族が住んでいながら、民主政体が治める例外です。中国共産党から見れば、すぐ横に違う中華政体(台湾)があって、そこでは民主主義による統治の下、自由と繁栄を謳歌しています。
これは別に中国共産党でなくとも、繁栄できるというアンチテーゼに映り、共産党政権の正当性を揺るがす脅威です。
民衆に自らの正統性を訴えるなら、民主政体が統べる台湾は放置できず、邪魔な存在にほかなりません。東ドイツにおける西ベルリン、北朝鮮から見た韓国に近く、ノドに小骨が刺さった感じでしょう。
だからこそ、中国は軍備の増強と近代化に励み、最後の未回収領土を平定するべく、着々と剣を研いできました。
台湾侵攻時の対米抑止
ただし、台湾侵攻にふみ切った場合、アメリカが介入する可能性が高く、世界最強の軍隊と戦わねばなりません。
台湾海峡にある澎湖諸島、中国本土のすぐ側の金門島など、台湾本島以外を狙えば、アメリカも介入しないでしょうが、いずれは本丸(本島)を制圧せねばならず、結局はアメリカと直接対峙する運命です。
それゆえ、中国は「A2AD戦略」を推し進めながら、低コストで相手に高リスクを強いたり、アメリカの動きを制約できる環境を築きました。それと同時に海・空戦力の増強に励み、現在は複数の空母艦隊を保有しています。
空母機動部隊の運用は難易度が高く、維持するだけで莫大な費用が飛び、アメリカ以外にはできない事業でした。いくら大国といえども、空母艦隊は経済的な負担が大きく、あのソ連ですら失敗しました。
中国はそんな金食い虫の事業に取り組み、アメリカの11〜12隻の原子力空母に対して、すでに2〜3隻を保有するにいたりました。むろん、空母打撃群の編成と運用実績、総合的な練度ではおよばず、いまだ両者の実力差は大きいです。
しかし、アメリカは世界戦略の関係上、大西洋や中東にも戦力を割き、太平洋に全力投入はできません。
逆に中国は西太平洋に集中できるため、たとえアメリカの3〜4割の戦力であっても、局地的には米軍を戦力で上回り、抑止力として機能するでしょう。
中・長期:安全圏の確保
台湾の平定が優先目標とはいえ、最終的には「安全圏の確保」に行き着き、これが全てを誘発してきた動機です。
中国は沿岸部に人口が集まり、経済の重要地帯であるからこそ、海からの脅威を恐れています。沿岸部を防護するならば、近隣の東シナ海・南シナ海はもちろん、さらに外側の西太平洋も影響下に置き、緩衝地帯を設けたいはずです。
こうした動きは中国に限らず、どの国も安全圏の確保を望み、歴史上は何度も繰り返されてきました。戦前の日本を例にあげても、朝鮮半島を緩衝地帯として扱い、そこの支配を盤石にするべく、満州まで進出しました。
これを中国にあてはめると、本土防衛用に第1列島線を引き、その内側を「聖域化」します。主権線の第1列島線を固めるなら、その外側に利益線(第2列島線)を敷き、これが中・長期的な目標です。
ただし、中国が目指す安全圏には日本、フィリピンが含まれているほか、域内に米軍が展開しており、そう簡単には実現できません。
アメリカとその同盟網を崩さない限り、中国は東シナ海・南シナ海はともかく、西太平洋には安全圏を確立できず、海からの脅威は消えません。
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