災害派遣の必須装備
自衛隊は災害派遣の命令が下ると、現地に特殊な装備品を運び、自分でインフラをまかないながら、被災者を救助・支援してきました。
野外炊具での炊き出し、野外入浴セットの設置など、「温かい」支援が目立つなか、これらは「水」がないと何もできません。特に水道管が断絶している場合、きれいな水は手に入りづらく、最優先に確保すべき生命線です。
そこで、自衛隊は給水タンクのみならず、被災地に浄水装置を持ち込み、飲み水と生活用水を造り出します。
- 基本性能:浄水セット・逆浸透型2号
| 浄水セット(1号) | 逆浸透型2号 | |
| 浄水能力 | 約70トン以上 | 淡水:70トン以上 海水:30トン以上 |
| 貯水能力 | 約10トン | 約10トン |
| 要 員 | 最低3〜4名 | 最低3名 |
| 構 成 | 濾過装置(処理装置) 揚水・排水ポンプ 貯水タンク(5トン×2) 発電機、凍結防止機材など |
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| 値 段 | 不明 | 約1.2億円 |
まず、浄水装置は主に2つの種類があって、通常型は単に「浄水セット」と呼び、神戸製鋼所が1999年に開発しました。
意外かもしれませんが、製鉄では大量の水が欠かせず、なるべく多くを再利用したり、浄水してから放流します。必然的に濾過技術(ろ過)が進み、浄水が製鉄の副産物になりました。
そんな浄水セットを詳しく見ると、河川や池の水をきれいにするべく、数段階の処理プロセスを通しながら、不純物を除去する仕組みです。
システム自体は複数の濾過装置、揚水・排水ポンプ、貯水タンク、発電機などで構成されており、73式大型トラックに搭載できます。
ポンプと貯水タンクを除くと、処理装置は車から降ろす必要がなく、よく訓練されたチームであれば、短時間で浄水作業を始められます。
浄水セット(出典:陸上自衛隊)
近くの水源からホースで水を引き、1日で70トン以上を造水可能ですが、これは35,000人分の水にあたり、町の水道局に相当する能力です。
汚泥や細菌を除去したあと、さらに逆浸透装置で純水に近づき、最後は活性炭槽を通しながら、塩素処理で飲用できる状態にします。タンクは10トンまで貯められますが、冬場や雪国での作業を考慮して、凍結防止機能を備えました。
災害派遣での活躍は言うまでもなく、イラク派遣時にも7セットを送り、現地の自給自足体制を支えました。
2号で海水を浄化可能に
他方、この浄水セットは万能ではなく、ひとつ「弱点」がありました。
それは淡水しか処理できず、海水を濾過できないこと。
海岸から離れた内陸部はともかく、島国・日本にとって海水は豊富にあり、緊急時に使わない手はありません。
近くに淡水の水源がない、濾過装置でも対応できない場合、海水処理で真水を造るしかなく、特に島嶼部では死活問題になります。
離島は他より水源が少ないうえ、地下水は塩分が高いことが多く、大規模な部隊を展開するなら、海水処理能力は欠かせません。
近年は離島防衛が現実味を帯び、海水処理の必要性が高まったため、今度はNECが逆浸透型2号を作り、2014年に配備が始まりました。
海水は淡水とは濾過手順が異なり、それまでの製鉄関連技術ではなく、半導体の技術を応用しました。回路の細かい汚染を防ぐべく、半導体製造では逆浸透膜を使い、「超純水」を造らねばなりません。
この逆浸透技術を応用すれば、海水の濾過処理はもちろん、汚泥・汚染水も処理しやすく、従来の浄水セットに比べると、飲用水にできる幅が広がりました。
逆浸透型2号(出典:NEC)
また、システム全体の耐久性も高く、外の気温が60℃を超えても、マイナス30℃に落ち込んでも、問題なく作業を続けられます。
さらに、揚水/排水ポンプ以外は固定式になり、積み降ろす手間が省けたほか、そのまま荷台で使えるようになりました。トラックに積んだまま、後ろの制御盤で自動的に浄水を行い、作業時間の短縮を実現しました。
トラックごと輸送機で運べるものの、近隣の空港が使えなかったり、そもそも滑走路がない場所だと、浄水システムを3つに分割したあげく、大型ヘリに吊り下げて輸送します。
なお、造水量そのものは大きく変わらず、淡水で約35,000人分/日です。これが海水の処理になると、約15,000人分に減るとはいえ、1台で1個師団分を供給できます。
教育用の機材を除けば、那覇や宮古島に優先配備されており、離島防衛を意識しました。ただ、いまだ全体の配備数は少なく、調達の加速が望まれています。


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