軍用機のデビスモンサン基地
アメリカは第二次世界大戦で圧倒的な物量を誇り、終戦時の戦力は史上空前といえるレベルでした。ところが、戦争が終わって軍縮モードに入ると、これらは一転して余剰になり、廃棄もしくは予備保管されました。
たとえば、海軍向けには「予備艦隊」をつくり、一時は戦艦や空母まで保管されていました。これに対して、大量の航空機も似たように扱い、アリゾナ州の砂漠にあるデビスモンサン空軍基地、通称「飛行機の墓場」に集積しています。
もともと爆撃機の訓練基地だったところ、乾燥地帯で湿度が低い特徴を持ち、退役機を露天保管する場所に生まれ変わりました。砂漠気候は湿気による腐食が起きづらく、東京ドーム225個分の敷地と舗装がいらないほど硬い地面は、長期の露天保管に最適です。
その結果、いまでは4,400機もの航空機が集まり、戦闘機や輸送機、ヘリコプターなどがモスボール状態で保管されています。
これらは用済みとはいえ、稼働機向けの部品取りに使われるほか、外国に再販売されてきました。日本とも縁が深く、海上自衛隊のC-130輸送機のうち、6機はここで眠っていた退役機を再生(レストア)したものです。
しかし、いくら乾燥した土地とはいえ、長らく屋外放置されていたため、レストア自体は決して簡単ではなく、海自も作業遅延と不具合に悩まされました。
モスボール保管で眠る軍用機(出典:アメリカ空軍)
それでも、生産ラインが閉じた機体にとって、この墓場は貴重な部品供給源になっており、中古機でも比較的高性能であることから、お金がない国には魅力的なマーケットです。
このように航空機が眠る場所として知られていますが、基地には電子戦部隊や救難隊、対地攻撃の鬼「A-10攻撃機」を使う実戦部隊も配備されています。
民間機が眠るモハベ空港
デビスモンサン基地以外にも、飛行機の墓場と呼ばれる場所はありますが、そこでは古い民間機が集まり、その目的は同じ部品取りと中古販売です。
なかでも、カリフォルニア州・モハベ空港は最大規模を誇り、乾燥したモハベ砂漠のうち、東京ドーム285個分の敷地に民航旅客機が100機近く保管されています。
デビスモンサン空軍基地よりは機数で見劣るものの、世界中の航空会社からいろんな機体が集められました。もちろん、JALやANAから引退した機体もあります。
ただ、モハベ空港には定期就航路線がなく、現地の見学ツアーに申し込む場合、最寄りのロサンゼルスからは車で1.5〜2時間(約150km)はかかります。しかも、周りにホテルや飲食店は少なく、空港内もレストランとショップぐらいしかありません。
ちなみに、宇宙旅行を手がけるヴァージン社が拠点を置くなど、最近は民間の宇宙港としての側面が強くなりました。
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