戦後初の国産装輪装甲車
舗装道路を走るならば、戦車のようなキャタプラ式ではなく、装輪式(タイヤ式)の方が路上機動力で勝ち、近年は装輪装甲車が人気になりました。
陸上自衛隊でも装輪式が増えるなか、「82式指揮通信車」はその先駆けにあたり、戦後初の国産の装輪装甲車でした。
- 基本性能:82式指揮通信車
重 量 | 13.6t |
全 長 | 5.72m |
全 幅 | 2.48m |
全 高 | 2.38m |
乗 員 | 8名 |
速 度 | 時速100km |
行動距離 | 約500km |
兵 装 | 12.7mm機関銃×1 7.62mm機関銃×1 5.56mm機関銃×1 |
価 格 | 1両あたり約1億円 |
82式指揮通信車は現場で「シキツウ」と呼び、最前線で部隊の指揮を執るべく、通信機能を充実させた装甲車です。現場で指揮をする関係から、ゴジラや戦国自衛隊など、よく映像作品にも登場しており、その多くは「やられ役」としての出演でした。
しかし、いくら多数の戦車と装甲車、兵士をそろえても、的確な指揮・統率がなければ、たちまち烏合の衆と化すか、あるいは「遊兵」になってしまい、本来の戦力を発揮できません。
それゆえ、現場指揮官には専用の装備が欠かせず、82式指揮通信車はその一例と言えます。
その車内は決して広くないものの、一段高い後部には指揮通信室があって、無線機器と地図用のボード、折りたたみ式のテーブルなど、最大6名の作業空間が確保されました。
また、水深1mまでの渡河能力を持ち、配下の部隊に同行しながら、現場まで進出できる仕組みです。ただし、あくまで簡易の指揮所である以上、本格的な交戦は想定しておらず、兵装は自衛用の機関銃しかありません。
現代戦には厳しい
82式指揮通信車は計231両を調達後、連隊本部を中心に配備中ですが、現代は能力不足が目立ち、特に情報処理や通信面で追いつけません。
携帯電話・パソコンの黎明期に開発されたため、情報量が爆増した現代戦には対応できず、防衛省は「陳腐化」を理由に退役させるつもりです。
無線交信を前提とした通信機能、情報処理能力の欠如を考えると、情報共有を行うネットワーク型の戦闘には向かず、指揮すべき側が逆に足手まといになります。
さはさりながら、「装甲車」である強みは変わらず、貴重な装甲戦力には違いありません。指揮車両の役割は果たせずとも、非装甲車よりは生存性が高く、人員輸送には全然使えます。
装甲車不足の現実をふまえると、退役はもったいない気がするほか、具体的な後任は決まっておらず、その行方は不透明さが否めません。
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