中古払下げ品も?自衛隊・偵察用オートバイの頼れる性能

自衛隊の偵察オートバイ 陸上自衛隊
この記事は約3分で読めます。

優れた機動力・汎用性

戦いには「戦場の霧」という言葉があります。

これは作戦計画を狂わせたり、戦局を左右する不確定要素を指しており、事前の準備や想定を超えるものです。

このような霧を少しでも晴らすべく、軍隊では敵の状況をつかむ「偵察」を行い、この活動を怠ったり、軽視したまま戦闘に入ると、ほとんどは痛い目に遭います。

それゆえ、陸上自衛隊も偵察を重視しますが、その際に重宝されるのが「偵察用オートバイ」です。

  • 基本性能:偵察用オートバイ
  XLR250R
(ホンダ)
KLX250
(カワサキ)
重 量 121kg 117kg
全 長 2.17m 2.14m
全 幅 0.86m 0.88m
全 高 1.2m
乗 員 1名
速 度 時速135km
出 力 28PS/250cc 24PS/250cc

このオートバイは偵察小隊や普通科連隊に配備されており、高い機動力と汎用性を誇ります。自衛隊車両のなかで最も小さく、UH-1ヘリやゴムボートにも載るなど、機動展開性にも優れた車両です。

他の自衛隊車両と同じく、オリーブドラブ(OD)色に塗装されていますが、その実態は民間バイクを改良しただけであって、性能面では市販品と大差ありません。大きな違いといえば、バンパーや無線機用のラックが追加されたぐらいです。

陸自ではホンダの「XLR250R」、カワサキの「KLX250」という2種類を使い、5代目にあたる後者は2000年頃に導入されました。

ちなみに、4代目の「XLR250R」までホンダ製でしたが、5代目になってカワサキがようやく受注を獲得しました。

偵察用オートバイ(出典:陸上自衛隊)

さて、基本性能は市販品と変わらないものの、その使い方は大きく異なります。

まず、単車の機動力を活かせるため、87式偵察警戒車などが入れない狭い道も進み、起伏の激しい山中を走行したり、何かあればすぐに離脱可能です。

通信状況が悪いなかの伝令役に加えて、小規模な戦力展開にも利用しやすく、災害時は先遣隊としても活躍してきました。災害派遣では初めに状況を確認せねばならず、瓦礫が散乱する道路を走れるバイクは適任です。

その使い勝手のよさから、かつて騎兵がしていた役割を引き継ぎ、取って代わったといえます。しかも、バイクは馬のように疲弊せず、より速く走り抜けられるゆえ、速度重視の偵察任務には向いています。

ただし、バイクの騒音は敵に察知されやすく、隠密性では小型ドローンの方が安全でしょう。見つかる前提の威力偵察だったり、途中までしかバイクで進むない場合は別ですが。

ヘリからの展開(出典:陸上自衛隊)

なお、任務中の自衛能力を確保すべく、乗り手は89式小銃を携行したうえで、バイクを盾として使ったり、手放しで運転しながら、射撃せねばなりません。

こうした立ち乗り射撃は必須スキルであって、駐屯地祭の訓練展示では目玉イベントのひとつです。ほかにも、ウィリーやジャンプのようなアクロバティックな技も披露しており、過酷な地形を走れる技量を持っています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました