軽空母としても使えるスペインの強襲揚陸艦「ファン・カルロス1世」

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地中海安定に欠かせない多用途艦

かつて「太陽の沈まぬ国」と言われたスペインは最盛期と比べて国力は落ちたものの、地中海の入口に位置する戦略的重要性は変わっておらず、NATO加盟国として一定の軍事貢献も求められます。

そのため、スペイン海軍は「無敵艦隊」を誇っていた時代よりは小規模ながらも、フランスやイタリアとともにNATO地中海艦隊の一翼を担う存在としてイージス艦と強襲揚陸艦すら保有しています。

特に、強襲揚陸艦「ファン・カルロス1世」はスペイン最大の軍艦であるのみならず、状況に応じて軽空母としても使えるのが特徴です。

⚪︎基本性能:強襲揚陸艦「ファン・カルロス1世」

排水量 19,300t(基準)
全 長 230m
全 幅 32m
乗 員 295名(操艦要員)
速 力 21ノット(時速38.9km)
航続距離 9,000浬(約16,000km)
兵 装 20mm機銃×4
12.7mm機銃×2
デコイ発射機
輸送力 兵員900名以上
戦車46両など
艦載機 ヘリコプター12〜20機
F-35B戦闘機×12(予定)
搭載艇 上陸用舟艇×4
高速ゴムボート×6
建造費 約800億円

この強襲揚陸艦は独裁者フランコの死後、スペインを民主化に導いた功績で知られる国王にあやかって命名され、設計的にはオーストラリアの「キャンベラ級」の準同型艦にあたります。

もともと運用していた中古揚陸艦を置き換えるために揚陸作戦を中心としつつ、航空作戦や人道支援にも対応できる多用途艦として建造されました。

全通式の飛行甲板には中型ヘリ向けのスポットが6つ設けられていて、小型ヘリであれば8機、大型のCH-47輸送ヘリでも4機を同時運用できます。格納庫はCH-47またはV-22オスプレイが10機は入るほど広いですが、飛行甲板での露天係止を行えばさらに数を増やせるそうです。

そして、この格納庫の下にある車両用のスペースには最大46両のレオパルト2戦車を載せられるうえ、直結したウェルドックを用いてそのまま上陸用舟艇で揚陸できます。

このウェルドックも上陸用舟艇4隻、高速ゴムボート6隻を収容できる広さが確保されており、揚陸作戦をしない場合は追加の車両スペースとしても使用可能です。

海上自衛隊の「おおすみ型」輸送艦のようにエア・クッション型のLCAC揚陸艇も運用可能ですが、設計の制約で1隻しか搭載できないため、基本的には使わない方針です。

強襲揚陸艦「ファン・カルロス1世」と後部ウェルドックから発進した上陸用舟艇(出典:スペイン海軍)

ほかにも、揚陸作戦を支援するために集中治療室1つと手術室2つ、ベッド22床などが整備されているので、災害救援でも使える簡易病院船という一面も持っています。

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