高速・小型な遠征病院船
アメリカは最大1,300名も対応できる大型病院船「マーシー級」を運用しており、コロナ流行時にはニューヨークとロサンゼルスの医療能力を手助けました。
しかし、対中国を見据えた太平洋への展開を考えれば、タンカー改造型で足が遅く、たった2隻の「マーシー級」では足りません。
より迅速に駆けつけられる病院船が求められるなか、アメリカは収容規模を減らしてでも、高速航行できる新型病院船を建造することにしました。
まずは、建造中の「スピアヘッド級」遠征高速輸送艦をミニ医療船としても使えるようにしたうえ、本命とされる「ベセスダ級」遠征医療船(EMS)に向けて運用上の課題をいろいろ洗い出す方針です。
- 基本性能:「スピアヘッド級」遠征高速輸送艦(EPF)
排水量 | 1,515t(基準) |
全 長 | 103m |
全 幅 | 28.5m |
乗 員 | 41名 |
速 力 | 最大43ノット(時速80km) |
輸送能力 | 貨 物:約600t 兵 員:312名 |
兵 装 | 12.7mm機関銃×4を装備可能 |
建造費 | 1隻あたり約250億円 |
快速を誇る「スピアヘッド級」は就役予定の16隻のうち、最後の3隻に対して医療能力を与えて輸送と医療の「二刀流」を目指します。
そして、その後は最低3隻の「ベセスダ級」遠征病院船が建造されますが、こちらはV-22オスプレイにも対応させて航空運用能力を高めるつもりです。
「ベセスダ級」の気になる医療設備については、4つの手術室と8つの隔離病床、10個の集中治療室(ICU)を含む計124個の病床となります。
これは現行の「マーシー級」には劣るとはいえ、30〜40ノットを出せる能力は緊急性の高い医療任務には適しており、現場で応急処置する「救急車」のような存在です。
したがって、「マーシー級」が大きな総合病院として機能するのに対して、「ベセスダ級」は戦域を駆け巡る救急車として使い分ける形です。
小型病院船がもたらすメリット
最近はどこも小型化・高機動化の傾向が見られますが、病院船もこの流れを汲めば、展開可能地域が増やせます。
たとえば、タンカー改造型の「マーシー級」は入港できる場所が限られる一方、小さく喫水の浅い「ベセスダ級」は小規模港湾や浅海域にも展開可能です。
これは太平洋における島嶼防衛では有利に働き、島嶼国の巡回医療でも寄港先を柔軟に選べる利点をもたらします。
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