夢幻で終わったコマンチ・ステルス偵察攻撃ヘリとは？

高性能なステルス・ヘリ

F-35などのステルス戦闘機が飛ぶなか、ステルス・ヘリはあまり話題になりません。

しかし、アメリカは「コマンチ」というヘリを作り、1996年には初飛行を迎えています。

このステルス・ヘリはどのような機体だったのか？

• 基本性能：RAH-66「コマンチ」攻撃ヘリ

アメリカ初の本格的ステルス・ヘリとして、コマンチはF-117ステルス攻撃機を参考にしながら、「ひし形のデザイン」と電波吸収剤を使い、高いステルス性を獲得しました。

このような工夫に加えて、その機体の小型化に取り組み、レーダー反射断面積はAH-64「アパッチ」と比べて、約360倍も小さくなりました。しかも、小型化で空輸しやすくなり、アパッチより前方展開に向いています。

さらに、赤外線対策でエンジン排熱を減らしたり、エンジンの静粛性を高めるなど、偵察機としても使えるようになりました。

高性能センサーで状況を把握しながら、後続のアパッチに伝えるとともに、最新のコンピュータ制御システムを使い、全体の飛行安定性を向上させました。

一方、武装面では20mm機関砲を持ち、内蔵式のウェポン・ベイに対戦車ミサイル（最大6発）、あるいは対空ミサイル（最大12発）を搭載できます。

ステルス性は損なわれるものの、外付けのスペースを利用すれば、対地ロケット弾を装備したり、ヘルファイアをさらに2発、スティンガーは4発を追加可能です。

コスト超過と無人機の登場

コマンチは性能的には申し分なく、米陸軍では1,300機以上を調達予定でした。

ところが、開発費用は9,000億円にふくらみ、スケジュール遅延に苦しんでいる間、対テロ戦争が始まってしまいました。しかも、時代は無人攻撃機の活用に移り、特に「MQ-1プレデター」の活躍を受けて、高価な有人ヘリを偵察に使う理由がなくます。

その結果、2004年には計画が白紙化が決まり、多くの時間とコストをかけたにもかかわらず、コマンチはわずか2機の試作機で終わりました。

米陸軍航空博物館の「コマンチ」（出典：アメリカ陸軍）

現在は再び国家間戦争にシフトしたとはいえ、ロシア＝ウクライナ戦争では攻撃ヘリの有効性が疑問視されており、陸上自衛隊は攻撃ヘリを全廃する決断を下しました。ただし、この攻撃ヘリの廃止は早まった感が否めす、見直される可能性はあります。

アメリカはアパッチの最新型「AH-64E」を調達中ですが、もし将来的に新規開発するとなれば、コマンチが形を変えて再登場するかもしれません。