空対地ミサイル
いまや日本とイギリスは準同盟関係になり、イタリアを交えてステルス戦闘機を共同開発中です。こうしたなか、イギリスの軍需企業「MBDA社」が、日本に対して新型ミサイル「スピアEW」の購入を提案してきました。
これは次期戦闘機を見越しての打診ですが、このスピアとはどのようなミサイルなのか?
- 基本性能:スピア・ミサイル
重 量 | 90kg |
全 長 | 1.8m |
直 径 | 0.18cm |
速 度 | 時速900km以上 |
射 程 | 約140km |
価 格 | 1発あたり約4,000万円 |
そもそも、スピアはイギリス軍の空対地ミサイルであって、空軍のミサイル技術を高めるべく、2000年代から開発されてきました。それは同じ空対地ミサイルながらも、射程が短い「ブリムストーン」の技術を使っており、これを事実上発展させたような形です。
ちなみに、「スピア(SPEAR)」は英語で槍を意味するも、実際には「Select Precision Effects At Range(遠距離における柔軟な精密攻撃能力)」の略称です。
現在ある2つのタイプのうち、オリジナルは140kmの射程を持ち、空対地型の巡航ミサイルとなっています。その弾頭は小型ながらも、動く装甲車両や火砲、ミサイル発射装置を十分に破壊できるほか、船舶などの海上目標も撃破可能です。
発射後は亜音速で飛びながら、GPS機能・搭載センサーで目標に向かい、最終的には赤外線やレーザー誘導で命中します。ミサイルは良好な機動性を誇り、小型である利点を活かせば、F-35戦闘機に最大8本も搭載できます。
2016年に基本性能を確認したあと、2024年には実戦形式での試験を行い、ひと通りの目標を達成しました。
これに対して、スピアEWは電子戦型にあたり、敵のレーダーに偽目標を映しながら、防空網を撹乱・妨害するのが役目です。似た兵器にアメリカの「ADM-160 MALD」がありますが、これのイギリス版といえるでしょう。
つまり、本家スピアは純粋な対地ミサイル、スピアEWは電子戦での「おとり」を務めます。
どちらもユーロ・タイフーン、F-35戦闘機に搭載できるうえ、将来的には日英伊の「GCAP戦闘機」にも装備する見込みです。
日本も導入すべきか
そんなスピア・シリーズのうち、日本は電子戦型の購入を打診されたわけですが、敵基地攻撃能力の確保を目指す以上、こうした妨害・撹乱兵器は役立ちます。
すでにトマホーク巡航ミサイルを買い、戦闘機発射型のJASSMミサイルも導入するなか、これらの突破口を開き、命中率を高める意味でも、スピアEWのような兵器は必要です。
日本が想定する中国軍は、その防空能力を年々高めており、比較的遅い巡航ミサイルは迎撃されやすい状況です。そこで、スピアEWで欺瞞目標を多く作り出せば、中国軍の迎撃ミサイルが「おとり」にも向かうため、本命のミサイルが防空網を突破しやすくなります。
「数撃ちゃ当たる」という言葉が示すとおり、敵の防空能力を数で圧迫せねばならず、多数のおとりを映し出せれば、少ない数でも効果的に攻撃可能です。
むろん、スピアEWである必要はないものの、次期戦闘機との互換性が見込めて、性能試験で成果を確認できれば、導入する可能性は十分に考えられます。それは準同盟・共同開発国との関係深化にもつながり、政治的メリットがあるのも否めません。
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