英国製の砲塔+韓国製の車体
ポーランドといえば、対露強硬派としてウクライナ支援に熱心なほか、ヨーロッパ屈指の軍拡計画を進めています。すでに韓国からK2戦車などを爆買いしており、将来的には欧州最強の陸軍になる予定です。
現代地上戦で自走砲の重要性が増すなか、ポーランドは韓国製のK9自走砲に加えて、自国でも「AHSクラブ(カニという意味)」を生産してきました。
そして、この「カニ」は思いのほか速く、そこそこ高い攻撃力を持っています。
- 基本性能:AHSクラブ自走榴弾砲
重 量 | 48t |
全 長 | 12.1t |
全 幅 | 3.63m |
全 高 | 3m |
乗 員 | 5名 |
速 度 | 整 地:時速60km 不整地:時速30km |
行動距離 | 約400km |
兵 装 | 52口径155mm榴弾砲×1 12.7mm機関銃×1 |
価 格 | 1両あたり15億円 |
ポーランドが設計したとはいえ、実際には砲塔部分はイギリスの「AS-90」にあたり、それをK9自走砲の車体と組み合わせました。つまり、砲塔と車体は流用しつつも、独自の射撃管制システムや電子機器を組み込み、ポーランド仕様に改造したのがAHSクラブです。
原型のAS-90は堅実な性能を持ち、それにポーランド独自の手を加えたわけですが、同じNATO標準の155mm弾を使い、他国との互換性は引きつづき確保しました。
自動装填装置はついておらず、乗員も5名必要とはいえ、車内には40発分の弾薬が入り、毎分6発の射撃を3分間にわたり行えます。
特にシステムの統合運用には力を入れており、24両からなる砲兵戦隊でリアルタイム連携しながら、複数の目標をまとめて叩きます。このとき、反撃による一網打尽を防ぐべく、各車両の間隔を1km以上も開けたり、デジタル化と機動力でヒット・エンド・ランを繰り返します。
ウクライナへの供与と活躍ぶり
現在、ポーランド軍には90両近くが届き、さらに150両以上の購入契約を交わしていますが、すでに54両はウクライナに供与されました。
これらは火力不足に悩み、兵器供与が乏しかった戦争初期に大きな手助けになり、なんとかウクライナ軍の戦線を支えてきました。その活躍ぶりは素晴らしく、AS-90よりも砲身が長いことから、遠距離攻撃向けの火砲として重宝されています。
たとえば、2022年8月には「エクスカリバー誘導弾」を放ち、50km以上先の目標を破壊したそうです。また、2024年12月には「ヴォルカーノ弾」を使ったところ、なんと70km以上も離れた陣地に届きました。
めったにない戦果とはいえ、これは通常の2倍以上の射程にあたり、クラブを特殊砲弾と組み合わせれば、その長距離攻撃力を存分に発揮できると証明しました。
一方、激しい砲兵戦でウクライナは30両以上のクラブを失い、急きょ購入した54両を待ち望んでいる状態です。ただし、このような損害はクラブに限らず、他の自走砲や戦車でも徐々に増えています。
結局は運用次第になるものの、自爆ドローンが飛び交い、すぐに反撃を食らう現代砲兵戦において、少なくともクラブの長距離攻撃力は利点でしょう。
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