台湾有事の日本への影響、自衛隊の役割とは何か?

台湾有事のイメージ 外交・安全保障
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日米同盟を試す事案

台湾有事が地理的に日本を巻き込み、戦後最大の試練を与えるなか、それは日米同盟を試す事案ともいえます。

なぜなら、アメリカは台湾と事実上の同盟を結び、100%の保証付きではないにせよ、台湾関係法を根拠に介入するからです。そうなると、最初に在日米軍が緊急出動を行い、日本はその出撃拠点になります。

日米同盟は米軍基地の提供で成り立ち、日米安保条約の第6条によると、その使用範囲は「極東地域全体」を含み、日本以外も想定してきました。

言いかえると、日本は現行の日米同盟がある限り、極東有事では基地を提供せねばならず、たとえ自衛隊を出撃させなくても、間接的には関与する仕組みです。

朝鮮半島や台湾を問わず、極東有事とは切り離せない立場にあって、もし日本が非協力を決め込めば、同盟上の義務違反に映ります。

日本の非協力が原因で台湾が陥落、アメリカが敗れたとしたら、日米同盟は終焉を迎えるだけです。戦後のアメリカは極東から手を引き、日本はアメリカとの同盟関係を失い、中国の勢力圏に取り残されます。

この日米同盟を試すという意味でも、台湾有事は日本に無関係ではなく、安全保障の根幹に関わる問題です。

「台湾有事でアメリカに協力すべきか?」と問うならば、それは「日米同盟を終わらせるべきか?」に等しいです。

在日米軍基地は攻撃対象

仮に日本の態度が曖昧でも、すでに在日米軍基地が点在しており、ここを拠点に米軍が展開するため、最初から中国は日本を攻撃するでしょう。

台湾有事はウクライナ侵攻とは違い、主に海・空を巡る戦いになりますが、軍艦は母港に停泊しているとき、航空機は基地にいるときが弱く、最も「無防備」な状態になります。

したがって、中国は在日米軍基地をミサイルでたたき、なるべく序盤で米軍の戦力を削ぎながら、戦局を有利に進めようとするはずです。在日米軍の戦力が減る分だけ、初期段階の成功率は上がるわけですから。

当然、日本に対する武力行使にあたり、それは存立危機事態どころか、いきなり武力攻撃事態になります。

もし中国が日本の中立化をもくろみ、その余地があると認識したら、日本をヒヨらせるべく、恫喝や世論戦を仕掛けてくるでしょう。

日本周辺にミサイルを撃ち込み、国民の恐怖心と厭戦気分を煽り、在日米軍基地の使用を阻止、妨害しようとするかもしれません。ただ、最近の対中感情は極めて悪く、むしろ恫喝は逆効果と思われますが。

ここで中立や非協力を決め込むと、より厳しい戦後になるのは前述のとおりです。

いずれにせよ、日本が日米同盟を結び、沖縄が台湾に隣接しながら、そこをシーレーンが通る限り、台湾有事は日本を巻き込み、ほとんど日本有事と同義になります。

国際社会に対する責務

一方、中国の軍門に降る選択肢もあるにはあります。

最近の言論界を見ると、左派は従来の平和主義を捨て去り、「中国のような大国には逆えない」と変節中です。もはや平和主義でも何もなく、ただの親中・大国追随主義ですが、乗り換える選択肢がないわけではありません。

国際関係では「バンドワゴン」と呼び、大国以外の国々が繰り返してきました。

ただし、その場合は敵が中国からアメリカに変わるだけです。中国の影響下に入ると、今度は中国の防壁に立場が変わり、アメリカと対峙せねばなりません。

たとえるならば、織田信長と武田信玄に挟まれた徳川家康ですが、どちらかを選ばないと生き残れません。織田信長につくと、武田と敵対せねばならず、武田信玄に降れば、その尖兵として織田と戦うしかない。

また、米中のどちらにもつかず、日本が両者の仲介者を担い、外交的解決を勧める意見、あるいは中立を目指すべきとの声があります。

最初の「対話による平和」は正論なれど、ほとんど実現可能性がありません。正論だからこそ否定できず、言論界では猛威を振るいますが。

大前提として中国は台湾統一を決め込み、それに向けて着々と準備してきました。実行する能力はともかく、明確な意志を持っています。そんな相手が日本の説得を聞き、すんなり矛を収めるでしょうか。

かつて日本が中国より経済的に強く、世界2位の国力があった時代でさえ、中国の行動は変えられませんでした。当時と比べて国力が落ち、日米同盟を結ぶ日本の説得など、中国が耳を傾けるはずがありません。

なお、独自の中立政策を貫けば、台湾侵攻の結果に関係なく、戦後に両方から敵視されます。「中立」は聞こえがいいものの、両方を敵に回す覚悟が欠かせず、思い切って核武装するならともかく、日本の安全保障環境では無理に近いです。

日本単独で米中に対抗できるはずがなく、武装・非武装中立が非現実的である以上、結局はどちらかの陣営に属さねば、厳しい国際情勢を生き抜けません。

ならば、民主主義や人権、自由主義などの価値観に基づき、現状維持勢力(アメリカ)を選び、日本は自由主義陣営の一員、国際秩序の恩恵を受けてきた国家として、武力による現状変更には抗うべきです。

日本国憲法、国連憲章の精神に則り、独りよがりな一国平和主義ではなく、国際社会における責務、一定の役割を果たさねばなりません。そして、日本が東アジアにいる限り、地域安全保障で一定の責務を持ち、その覚悟が問われています。

これはウクライナ支援にも通じる話ですが、仮に日本がウクライナを助けず、台湾も見捨てたとしましょう。そんな日本が次に攻撃されたとき、誰が助けてくれるでしょうか?

ウクライナ・台湾の件に限らず、他国の侵略に目をつぶると、いざ自分が侵略を受けたとき、「同じく見捨ててよい」にしかなりません。

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