米軍の出撃拠点になる
さて、台湾有事が起きた場合、日本はどのような立場になるのか。
アメリカが介入すれば、最初に在日米軍が出動しますから、必然的に日本はその出撃拠点になります。日米同盟は米軍基地の提供から成り立ち、その使用範囲は「極東地域全体」の平和維持におよびます(条約の第6条)、
これら在日米軍基地から航空・海上戦力を出撃させて、ひたすら上陸部隊や輸送船団をたたき、その侵攻能力を奪う方針です。海・空から多数の長射程ミサイルを放ち、中国側の海上優勢を阻止するとともに、上陸部隊の兵站を維持できなくします。
この際、アラスカからも爆撃機が飛び立ち、ステルス・ミサイルで長距離攻撃を行い、海兵隊も島嶼部に展開しながら、高機動な対艦・対地攻撃兵器で中国軍を妨害します。
特に海兵隊はEABO構想に基づき、あえて敵の攻撃圏内で活動しますが、本音では南西諸島に分散配置したいはずです(沖縄の協力がハードル)。
沖縄周辺は「戦域」にならざるを得ない
まとめると、長距離ミサイルで輸送船団などを狙い、中国があきらめるまで継戦能力を削りつづけます。
これが台湾有事での米台側の勝利シナリオですが、日本はその大前提にあたる出撃拠点です。逆にいえば、日本が基地使用を許さず、非協力的な態度を貫けば、台湾島は中国軍の手に落ちてしまいます。
台湾防衛の成否は、日本の協力次第と言っても過言ではありません。
当然ながら、出撃拠点は攻撃対象になりやすく、中国軍のミサイルが飛んでくる可能性は高いです。
むしろ、日本を日和見させるべく、中国は恫喝攻撃や世論戦を仕掛けてくるでしょう。ミサイル攻撃で国民の恐怖心を煽り、中国側に有利な反戦・厭戦気分を作ろうとします。
ここで中立や非協力を決め込めば、より厳しい戦後になるのは前述のとおりです。
後方支援という役割
出撃拠点に加えて、日本は重要な後方支援拠点になります。
1950年の朝鮮戦争時と同じく、米軍に対する補給整備を担うとはいえ、あの時よりもさらに踏み込んだ内容になります。
具体的には、自衛隊による直接的な補給・輸送支援があり、これは最低限求められるものです。南西諸島が戦域に入る以上、自衛隊と米軍による共同作戦にならざるを得ず、中国軍とは交戦状態になるでしょう。
台湾有事における日本の役割について、ロシア=ウクライナ戦争でのポーランドにたとえる向きがありますが、実際にはウクライナ西部に近いです。
激戦地の東部と異なり、ウクライナ西部は比較的平穏なため、戦略上は欠かせない後方拠点になりました。さはさりながら、ウクライナ領なのは変わらず、ロシア軍のミサイルも時々飛んできます。
日本もそのような状況になり、補給戦や海上護衛戦、対潜哨戒、防空戦をしながら、戦況次第では米軍とともに対地・対艦攻撃を行うでしょう。
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