オーストラリアの装輪装甲車
陸上自衛隊では軽装甲機動車を更新するべく、ハーケイとイーグルの2つまで絞り込み、両者の性能を比較・検討しました。前者はオーストラリア産、後者はスイス産になりますが、本記事ではハーケイをみていきます。
- 基本性能:ハーケイ装甲車
| 重 量 | 7〜10t |
| 全 長 | 5.8m |
| 全 幅 | 2.4m |
| 全 高 | 2.3m |
| 乗 員 | 4〜6名 |
| 速 度 | 時速130km |
| 行動距離 | 約600km |
| 兵 装 | 12.7mm機関銃など |
| 価 格 | 約1億円 |
ハーケイは豪州のタレス社が2010年に作り、オーストラリア陸軍で1,000両以上が使われていますが、兵員輸送から偵察、警戒監視、指揮などを行える汎用車両です。
4輪駆動式の軽装甲車とはいえ、地雷や即席爆弾(IED)に対する防護力が高く、現行の軽装甲機動車よりは優れています。なお、乗員を銃弾や砲弾の破片からも守りますが、その耐弾性能はイーグルには劣るそうです。
ただ、細部や搭載装備は仕様によって違い、必要に応じて追加装甲をつけるなど、デフォルトからの防御力強化は見込めます。
ハーケイ装甲車(出典:オーストラリア軍)
大きな車内には4〜6名が乗り込み、屋根には12.7mm機関銃を設置できますが、こちらは遠隔操作タイプにしたり、グレネード・ランチャーに変更可能です。軽装甲機動車と比べた場合、車内はゆとりある設計になっているほか、移動時の快適性が増しました。
また、過酷なオーストラリアの大地を走るべく、強力なエンジンと頑丈な足回りを持ち、時速130kmという機動力を発揮してきました。この不整地走破力に加えて、空輸性にも優れていることから、CH-47輸送ヘリでそのまま運べます。
最終候補に残ったが
ハーケイは丈夫で防護力が高いうえ、装備を柔軟に変えられるため、能力的には問題ありません。
加えて、オーストラリア産という点に政治的思惑が絡めば、採用の可能性は高かったといえます。いまやオーストラリアは準同盟国にあたり、日本の新型フリゲートを購入するなど、両国の関係は新しい時代を迎えました。
自衛隊は少数ながらも、オーストラリアから輸送防護車(ブッシュマスター)を買い、在外邦人の保護用に運用してきました(わずか8両)。このような前例があるなか、ハーケイの採用は関係強化とともに、オーストラリア軍との運用互換性を期待できます。
あとは性能勝負ですが、前述の防弾性能だけでなく、価格面でも遅れをとりました。ハーケイは三菱重工が、イーグルは丸紅が輸入代理店になり、それぞれ競争を繰り広げたところ、イーグルの方が見積もりで安くなりました。
実際は2,000両近くが納入されるため、量産効果でコストは下がりますが、軽装甲機動車(3,000万円)から高騰するのは変わらず、円安の影響で1億円は下りません。
その結果、防衛省は民間車両の防弾化を行い、安く入手する方針に切り替えました。すなわち、現状ではハーケイ、イーグルともに検討が止まり、トヨタなどの民生車が有力候補に浮上しました。


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