有効な手立てはない?
その戦果は世界の空軍関係者を震撼させており、地上基地の脆弱性が改めて浮き彫りになりました。いくら高性能な戦闘機と軍艦があっても、駐機中・停泊中は無防備な状態に陥り、小型ドローンで無力化できるからです。
むろん、この事件は日本にとって他人事ではなく、改めて課題を突きつけています。
まず、日本はスパイ対策法すらなく、事前に取り締まるのが難しいです。国内監視が厳しいロシアでさえ、あのような潜入破壊工作を許したとなれば、スパイ防止法のない日本はどうなるのか。
中国のような監視社会を敷き、全国民と流通を統制・管理すれば別ですが、日本のような民主主義国家では不可能です。
公安などが監視しているとはいえ、日本は防諜関連の法整備が遅れており、他国のようにスパイ容疑では摘発できません。別件での逮捕・捜索はできるものの、包括的な摘発体制がなく、遅れを取らざるをえない状況です。
今回の件でわかるとおり、基地警備の重要性もさることながら、国全体で密輸や工作員の潜入を防ぎ、他国水準の防諜体制を整えねばなりません。
さらに、自衛隊基地は容易に接近できてしまい、横須賀や呉では艦艇がすぐそこに停泊しています。間近まで行かずとも、高台の公園からドローンを放ち、そのまま接近できるような環境です。
以前、外国人がドローンで近づきながら、護衛艦「いずも」を撮影する事件がありました。これが爆薬を搭載していた場合、飛行甲板を損傷させたり、潜水艦の船体を傷つけられます。特に潜水艦は深海に潜る関係から、船体損傷などあってはならず、有事の初期段階で狙われる可能性が高いです。
このような脆弱性は航空自衛隊も変わらず、今回のように偽装トラックで接近されたら、あまり手の打ちようがありません。普通のコンテナと偽り、運転手が知らぬまま指定場所に向かい、そのままドローンが起動するという具合です。
闇バイトで運び屋を雇い、ドローン入りの箱を運ばせるだけでも、小規模な攻撃はできるほか、横須賀や舞鶴の近くは貨物船が行き交い、そのコンテナに紛れ込ませれば、ほとんど防げません。
ウクライナが使用した偽装コンテナ
そもそも、日本は物流の輸送量が多く、国内のトラック数は1,440万台を超え、コンテナの取扱量は2,200万個以上です。
全荷物の事前検査、トラックの検問が非現実的である以上、あとは航空機用の掩体壕(バンカー)を増やしたり、格納庫の耐性を強化しながら、地上駐機を避けるしかないです。
警備体制の見直しも避けられず、あらかじめ危険箇所に目星をつけるなど、要警戒場所を把握せねばなりません。
願わくは、警察との協力を進めて、基地の内外で多重警戒網を敷き、日頃から連携しておきたいです。日本の警察は左翼勢力との攻防において、手製迫撃砲などに対処してきたゆえ、彼らの知見と経験値は役立ちます。
ただ、警察も自衛隊も人手が足りず、それぞれの役割の違い、組織間の関係性をふまえると、常態的な協力体制は困難でしょう。
あとは、対ドローン兵器の導入を急ぎ、迎撃体制を整えることですが、周りに住宅地・市街地がある場合、火器の使用は巻き添えリスクをともない、電波妨害のようなソフトキルが好まれます。
しかしながら、有事での限定使用はどもかく、平時からの妨害電波は住民の反対に遭い、光ファイバーを使う有線式ドローンだと、せっかくのジャミングも効きません。残るはレーザー兵器ですが、こちらは絶賛開発中であることから、早期配備を期待するしかありません。
半径数キロを封鎖する案もあるとはいえ、これも周辺地域との兼ね合いを考えると、とても実行できるとは思えません。田舎にポツンとある基地はいざ知らず、都市近郊では周辺封鎖など無理です。
基地は周辺住民の理解で成り立ち、対策と地元感情のバランスを取らない限り、関係悪化という中・長期的なデメリットにつながります。特に怪しい人物を見張るとなると、住民の協力や通報も欠かせず、地域全体での取り組みが大事です。このあたりは「防犯」と同じ概念です。
今回の事件で基地警備の根幹が揺ぎ、他国も同じく頭を抱えながら、全面的な見直しを強いられています。さはさりながら、現状では有効な手立てはなく、従来の延長線上の措置を講じるしかないでしょう。


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