圧倒的な航空戦力
アメリカは歴史上「最強」の国家ですが、それは複数の要因に支えられています。そのひとつは圧倒的な軍事力であって、特に海・空軍力では他国の追随を許しません。
現代戦では「航空優勢」が欠かせず、空を支配できるかで勝敗が変わり、相手の防空体制、航空戦力を叩かねばなりません。
この点でいえば、アメリカの作戦能力はズバ抜けていて、湾岸戦争やイラク戦争で実証したとおり、初戦で敵の防空能力を制圧してきました。ロシアがウクライナで航空優勢を獲れず、いまだ空を支配できていないのとは対照的です。
世界広しといえども、複雑な空中打撃力を組みながら、いきなり相手の防空能力を奪い、「航空支配」を達成できるのはアメリカぐらいでしょう。中国の実戦能力は未知数ですが、少なくとも経験値ではアメリカにはかないません。
ステルス機を大量運用(出典:アメリカ空軍)
そんなアメリカは空軍が約1,700機の戦闘機に加えて、140機の爆撃機、500機近い空中給油機、520機の輸送機を保有しています。戦闘機の多くは高性能、あるいは新鋭機にあたり、作戦行動を支える空中給油機、戦力投射に必要な輸送機でも、その戦力はバケモノ級でしかありません。
なにより恐ろしいのが、これは「空軍」の航空戦力にすぎず、アメリカ海軍、海兵隊、陸軍を含めたら、さらに戦力が増えることです。
たとえば、世界の航空戦力ランキングにおいて、当然の1位はアメリカ空軍ですが、2位はアメリカ海軍と言われているほど。実際のところ、アメリカ海軍は約450機の戦闘機を持ち、普通に一国の空軍力を超えています。
海を支配する海軍
そのアメリカ海軍は空母中心の打撃力により、イギリスに代わって7つの海を支配してきました。原子力空母は約70機の艦載機、数隻のイージス艦とともに打撃群を組み、中規模国家の空軍に匹敵する戦闘力を誇ります。
アメリカは原子力空母を11隻を持ち、常に3〜4隻は稼動状態にあるなか、ひとつの打撃群は毎年1兆円の費用がかかり、他国には維持不可能な金食い虫です。ローテーションといえども、複数の空母打撃群で世界中をパトロールしながら、いつでも脅威を取り除ける状態にあります。
日米英の連合艦隊(出典:アメリカ海軍)
こんな芸当はアメリカ以外にできず、先述の航空支配力・航空打撃力に加えて、海上における支配力、そこからの戦力投射能力でもダントツです。
かつてイギリス海軍は「7つの海」を支配しましたが、現代はアメリカ海軍がこれに当てはまります。しかも、世界有数の海軍のうち、中露以外は味方に数えられるゆえ、盤石な海上支配力を実現しました。
展開先での戦力にせよ、求められる作戦能力にせよ、アメリカ海軍だけで足りなければ、海上自衛隊やイギリス海軍、フランス海軍が加わり、補完戦力として期待できます。日米英仏伊豪などの連合艦隊に対して、正面から対抗できる相手はおらず、このシーパワー連合も力の源泉のひとつです。
若返りで国力を維持
さて、通常の覇権国家は成長を遂げたあと、経済的な低迷期に入ったり、別の国にとって代わられます。歴史をふり返ると、スペインはオランダに、オランダはイギリスに、イギリスはアメリカに覇権国の座を渡してきました。
ところが、アメリカは経済不況こそあれども、毎度のごとく国力を回復しており、従来の覇権国家とは「代謝」が違います。
その理由としては、アメリカが移民国家であるほか、いわゆる弱者を切り捨てながら、経済成長を優先するからです。
常に移民が入ってくることから、出生率低下や人口減少には見舞われず、他の先進国のような少子高齢化には陥りません。過剰な移民流入の問題、人種間の対立はあるものの、そもそも移民を前提とした国家のため、他国と比べて社会的な受容力は高いです。
これら若い労働力で代謝を維持しながら、社会福祉よりも成長優先の政策を行い、国家としての経済成長を実現してきました。むろん、それは経済格差と社会不安を生み、日本や欧州が目指してきた中流社会とは異なります。
移民の流入で若返り、経済弱者を切り捨ててでも、全体の成長を優先した結果、イノーベーションなどが生まれやすく、回復できる代謝を手に入れました。
コメント