長時間監視する「空の目」
あまり知られていませんが、日本は領海と排他的経済水域を合わせた「海洋面積」では世界6位にランクインします。
この広大なエリアを昼夜問わず、自衛隊や海上保安庁が監視しているものの、深刻な人手不足などを受けて、いまは無人機運用へとシフトしている最中です。
そのなかで目玉とされているのが、航空自衛隊が導入した高高度偵察用の無人機「RQ-4B グローバル・ホーク」になります。
- 基本性能:RQ-4B グローバル・ホーク
全 長 | 14.5m |
全 高 | 39.9m |
全 幅 | 4.7m |
速 度 | 時速611km |
航続距離 | 約18,000km |
滞空時間 | 36時間 |
高 度 | 約18,300m |
価 格 | 1機あたり約170億円 |
グローバル・ホークは2004年からアメリカで使われている大型無人機で、その特徴は高高度域を30時間以上も連続飛行できる点です。
大きな機体にはレーダーや光学カメラ、赤外線センサー、衛星通信アンテナなどが搭載されており、民間旅客機の倍近い高さを飛びながら、地表付近の目標を監視・識別します。
ほかの無人機と同じく、グローバル・ホークの操縦は地上オペレーターが行い、あらかじめ設定された経路を飛ぶわけですが、それはマウスとキーボードがあればできてしまうほどシンプルなものです。
そして、とらえた情報は地上にリアルタイム共有されるほか、1機で約10万平方キロメートル(韓国の国土面積に相当)をカバーできるそうです。
いまは青森県・三沢基地の「偵察航空隊」に3機が配備中で、アメリカから派遣された技術者とともに、自衛隊初の本格UAVとして運用されています。
同基地に配備されているF-35戦闘機と同じく、飛行・整備では英語力が欠かせず、現場隊員は新しい装備の習熟だけでなく、言葉の壁にも苦労しているようです。
もちろん、P-1哨戒機などの有人機も引きつづき任務にあたりますが、グローバル・ホークは交代要員さえいれば、最大36時間も連続飛行できるため、切れ目のない警戒監視網を実現可能です。
配備計画は中止されていた?
一方、グローバル・ホークは高性能がゆえに調達・維持費が高く、司令部などの地上設備も合わせれば、初期費用だけで300億円以上になりました。
また、保守サポートにはアメリカ側の協力が必要であり、彼らとの契約も含めれば、年間維持費も約120億円にのぼります。これは当初の見積もりも高く、その費用対効果を疑問視したり、海保のように「MQ-9B シーガーディアン」へ切り替えるべきという声が出ました。
さらに、追い打ちをかけたのが、日本が使う「ブロック30」というバージョンがアメリカではもう退役することです。
アメリカやNATO諸国は最新型「ブロック40」へと移り、旧式のブロック30を運用するのは日本と韓国だけになりました。このブロック30型は日韓両国でたった7機しかなく、部品調達でさらなるコスト高騰が見込まれます。
こうした事態を避けるべく、じつは日本も導入中止を考えたそうですが、当時の安倍政権がそのまま計画を進めました。これは大口契約の「イージス・アショア計画」がとん挫したのを受けて、トランプ政権へ配慮せねばならなかったのが原因といわれています。
いずれにせよ、すでに配備された現在はコスト抑制に注力するしかなく、同じ苦悩を共有する韓国とも協力しながら対米交渉を行うなど、知恵をしぼるしかありません。
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