ジャベリン対戦車ミサイルの恐るべき威力、そして値段は？

歩兵が戦車を倒す切り札

地上戦のおける戦車は歩兵にとって恐怖すべき兵器ですが、携行式ミサイルの登場で歩兵も対抗手段を持ち、その最たる例がアメリカの「ジャベリン対戦車ミサイル」です。

ジャベリンは冷戦期にソ連戦車を想定して開発されたもので、戦車のような装甲車両から建物にまで使えるほど汎用性が高く、1996年から計4万発以上が生産されてきました。

• 基本性能：FGM-148 ジャベリン

このミサイルはロックオン時の情報に基づいて飛び、赤外線画像で自動追尾する「撃ちっ放し能力」を備えたことで、現存する対戦車火器としては世界最高クラスの「94%」という命中率を誇ります。

この自律誘導機能を使えば、撃つ側はすぐさま退避できるうえ、発射時の後方爆炎（バックブラスト）も少なく、敵に発見される可能性を減らしたり、室内からも撃てるようになりました。

攻撃では目標に直撃させる「ダイレクト・アタック」、あえて上から狙う「トップ・アタック」の2つが選べるなか、前者は建物・陣地などに使われるケースが多く、その飛翔高度も約50mと低めに設定されています。

一方、トップ・アタックでは最大160mの高度まで飛翔したあと、戦車の弱点である上部を狙い撃ちする形です。

その気になる射程距離は飛翔高度によって異なり、ダイレクト・アタックであれば約500m、対戦車に有効なトップ・アタックだと最大2,500mまで伸びます。

ゆえに、戦車側は発射地点の特定や反撃、上から襲ってくるミサイルを回避するのが難しく、

ジャベリンの主要部分（出典：アメリカ軍、筆者加工）

弾頭部分については対戦車榴弾（HEAT）である成形炸薬弾を使い、起爆時に流体化した金属が破壊力を増大させながら、その装甲を貫く仕組みです。ところが、仮想敵のロシア戦車（旧ソ連戦車）には、被弾時にあえて爆発して敵弾の威力を減殺する「爆発反応装甲」がよく使われています。

そこで、ジャベリンは炸薬を前後に分散配置することで、先頭で爆発反応装甲の効果を吸収・無力化しつつ、後ろの炸薬でダメージを与える対抗策に出ました。これで敵戦車を確実に撃破するほか、爆発反応装甲を持たない相手には二重のダメージをもたらします。

こうした利点に対して、ジャベリンにも欠点が当然ながらあって、その最たるものがコスト問題です。

「NLAW対戦車ミサイル」のような他の対戦車ミサイルより高く、そう易々とは大量生産・大量消費できません。しかし、世界トップクラスの性能を持ち、数億円は下らない戦車を撃破できるため、その費用対効果は十分といえるでしょう。