戦果不明という謎
すでに実戦投入から約10年経っている「スイッチブレード300」ですが、2022年のロシア=ウクライナ戦争ではウクライナ側に約700機が供与されました。
これらはロシア軍の燃料トラックや塹壕陣地を攻撃するのに使われていると思われます一方、具体的な戦果は未だに不明という謎多き兵器でもあります。
調達のしやすさと使い勝手のよさから、小型民生ドローンの方を好む兵士が多く、スイッチブレードが投入されている映像は少ないのに対して、民生ドローンから小型爆弾を落とす様子は多数見かけます。
こうした小型の「スイッチブレード300」に対して、戦車などの装甲車両を狙う「スイッチブレード600」は大型化で、重量も50kg超えとなっています。
一応、兵士ひとりで持ち運べますが、さすがに長距離移動時は車両輸送に頼らざるをえません。
スイッチブレードを発射する兵士(出典:アメリカ軍)
基本的な使い方は「スイッチブレード300」と同じですが、最大の違いは弾頭に「戦車殺し」で有名なジャベリン対戦車ミサイルと同じものを採用している点。
したがって、ジャベリンミサイルと同様の威力を発揮でき、ほぼミサイルと変わりません。むしろ、40分間にわたって上空を徘徊できる点では、ミサイルよりも厄介な存在でしょう。
しかも、ジャベリンより安く、最大90kmの飛行距離(≒射程)を誇るうえ、タブレットで簡単に操作できるため、使用者側としては極めて魅力的です。それは本家アメリカも対戦車兵器としてハンヴィーの後部に搭載するほど。
そして、実はこの「スイッチブレード600」はまだ試作段階だったのですが、ロシア=ウクライナ戦争の勃発を受けて、急遽ウクライナに提供された経緯があります。
具体的な戦果は確認できていないなか、製造元の「エアロヴァイロンメント社」は増産して、今後もウクライナに供給しつづける意向です。
ちなみに、同社の経営者はソ連のアフガン侵攻で難民となり、アメリカに逃れた経験を持つため、ウクライナ支援には「個人的な意向」もかなり含まれています。40年以上前の出来事が自爆型ドローンという形で跳ね返ってきたわけですが、正規戦におけるスイッチブレードの効果はまだ未知数といえます。
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