まだ使う？自衛隊の改良ホーク・ミサイルの性能・射程とは

陸自の旧式防空ミサイル

地上部隊は空からの攻撃に弱く、陸上自衛隊も例外ではないことから、いろんな地対空ミサイルを持つなど、防空を重視してきました。なかでも、旧式で陳腐化が進んでいるにもかかわらず、いまだ運用されているのが「地対空誘導弾・改良ホーク」です。

• 基本性能：地対空誘導弾・改良ホーク

ホークは中距離地対空ミサイルとはいえ、もともとアメリカが1960年代に使い始めたもので、その名前は「鷹（Hawk）」にあやかっています。ちなみに、これは「 Homing All the Way Killer（最後まで追尾して仕とめる）」の略称です。

ミサイルそのものは大きく、むき出し状態で発射機に載せるスタイルです。発射機には通常3発が搭載されており、遠隔操作しながら目標の方角に向けて発射します。

これにレーダーや射撃統制装置なども加わり、目標に電波を照射しながら、ミサイルを誘導するセミ・アクティブ方式です。ただし、電波照射を行うイルミネーターに頼る以上、「同時誘導数＝イルミネーター数」という構図になり、複数目標への同時対処は期待できません。

改良ホークを準備する陸自（出典：アメリカ国防省）

とはいえ、車両で牽引すれば機動展開できるほか、開発時は画期的な防空システムだったため、NATO諸国を中心に多くが採用しました。

イスラエルやクウェートでは実際に撃墜戦果をあげたものの、1990年代に入ると旧式化が否めず、アメリカでは2002年に全て退役しました。

一方、陸自は1960年代の導入以降、長らくホークを使い続けており、いまも「改良・ホーク」が現役稼働中です。

この改良型に3つのタイプがあって、現在は電波妨害への耐性を高めた「改良II型」、距離測定や射撃統制機能をひとつに集めた「改良Ⅲ型」の2つを使っています。

初期型よりは防空範囲が広く、低空目標への迎撃能力も高めたとはいえ、半世紀前に開発された点は変わらず、これ以上の改良・能力向上は見込めません。

お金がなくて進まない後継調達

では、なぜ旧式ミサイルを使い続けているのか？

その答えは単純に「お金がないから」です。

後継の03式中距離地対空誘導弾の配備が進み、さらなる改良型も調達中とはいえ、1個中隊分の費用は約165億円にふくらみ、全ての部隊には届いていません。したがって、一部は改良ホークを更新できておらず、新しい脅威への対処が危ぶまれています。

ないよりはマシ（出典：陸上自衛隊）

されど、防空ミサイルのもたらす影響をふまえると、旧式でも無いよりはマシです。

いくら旧式といえども、防空ミサイルは撃墜だけではなく、敵の航空機を近づけさせず、その行動を制約する効果があります。「撃墜されるかも」という心理的影響を通して、ある程度は航空活動を抑え込み、戦果とは違う効果を発揮してきました。

ロシア＝ウクライナ戦争では、ウクライナ側の防空能力の強化するべく、アメリカは倉庫からホークを引っ張り出してきました。

NASAMS防空ミサイルなどと比ベて、どこまで役立ったかは不明ですが、前述のとおり「ないよりはマシ」だったはずです。たとえ発射しなくても、戦場にいるだけで被撃墜リスクを与えられます。