低速・安価なプロペラ機
各国でステルス戦闘機が飛ぶなか、状況次第では低速な機体の方が好都合なときががあります。特に対テロ・対ゲリラを考えた場合、わざわざ高価なジェット戦闘機は必要なく、むしろ費用対効果が釣り合いません。
そこで登場するのが「COIN機」という機体ですが、その具体的な役割については別記事を参照ください。

このようなCOIN機のうち、代表例といえるのが「A-29スーパーツカノ」です。
- 基本性能:A-29 スーパーツカノ
全 長 | 11.3m |
全 幅 | 11.14m |
全 高 | 3.97m |
乗 員 | 2名 |
速 度 | 最高速度:時速590km 巡航速度:時速520km |
航続距離 | 2,850km |
上昇限度 | 10,688m |
兵 装 | 12.7mm機銃×2 ロケット弾 誘導爆弾 空対空ミサイル |
価 格 | 1機あたり約25億円 |
A-29はブラジルの「エンブラエル社」がつくり、空軍に納めたプロペラ式の軽攻撃機になります。余談ですが、エンブラエル社は大手旅客機メーカーとして、ボーイング、エアバスに続く世界3位です。
ブラジルは広大なアマゾン地域を抱える以上、違法伐採や密林を隠れた麻薬組織に対処せねばならず、COIN機は高性能な戦闘機より需要があるといえます。
飛行中のA-29(出典:アメリカ空軍)
プロペラ機は時代遅れな印象を受けますが、その中身は現代技術が詰まっており、イメージとは全く違う性能です。
たとえば、パイロットの視界内に情報を映したり、多機能表示で状況把握を行うなど、コックピットのデジタル化が行われました。
ほかにも、赤外線監視装置、ミサイル警報機能、チャフ・フレア発射機を持ち、軍隊以外の相手ならば問題ありません。固定武装は機銃のみとはいえ、対空ミサイルと誘導爆弾を搭載できるため、COIN機としては重武装です。
ニッチすぎて安泰な地位
A-29はCOIN機の中では高スペックを誇り、ブラジル以外でもコロンビア、チリ、ナイジェリア、ガーナなどが導入済みです。また、タリバンに対する能力を高めるべく、アメリカもアフガニスタン空軍用に採用しました(タリバンの復権で失敗したが)。
手頃な価格に加えて、ライバルが不在という要因も重なり、A-29の運用は軍隊にとどまらず、一部の民間軍事会社でも使われています。
COIN機は途上国を中心に需要があるものの、これら国々は潤沢な予算を持たず、せいぜい数十機しか買えません。それゆえ、新しいCOIN機をつくるインセンティブは低く、こうしたニッチな需要を満たせる限り、A-29の地位は揺るがないでしょう。
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