長射程でステルス！LRASM対艦ミサイルの恐るべき性能

ハープーンの後継を目指した

対艦ミサイルの定番といえば、日本も使うハープーン・ミサイルですが、このベストセラー兵器のあとを継ぐべく、「LRASM（ロラズム）」が開発されました。

• 基本性能：LRASMミサイル

まず、LRASMとは「Long Range Anti-Ship Missile（長射程の対艦ミサイル）」の略であって、アメリカが作ったステルス巡航ミサイルです。

「JASSM」対地ミサイルの派生型にあたり、従来の対艦ミサイルをしのぐ射程と弾頭重量を持ちながら、敵艦隊を防空圏外から撃破します。

アメリカは冷戦終結とソ連崩壊にともない、しばらく対艦攻撃兵器は「サボり気味」でしたが、その間に中国海軍の増強と能力拡張が進み、ハープーンやトマホークでは心許ない状況になりました。

こうした背景をふまえて、LRASMはステルス重視の設計に加えて、電波発信や排熱を抑えており、敵による探知を防ぐとともに、ミサイルの生存性を高めました。

そのため、誘導は自らレーダー波を出すのではなく、目標の発する電波をとらえたり、味方からの情報を受信するパッシブ方式です。

この受信能力に画像赤外線、GPS誘導機能が合わさり、複合式レーダーで妨害への耐性を高めました。さらに、データリンク機能を使えば、連携攻撃と途中の軌道修正ができます。

もしデータリンクやGPSとの接続が断たれても、ミサイル自身の測位システムで自律飛行します。この測位システムにはAI機能が組み込まれており、正確な識別による誤爆回避、動く目標の細部まで狙える精密攻撃を実現しました。

また、航空機・艦船の両方で使うとはいえ、どちらも中高度域を飛行したあと、海面スレスレの低空飛行に移る仕組みです。

ところで、LRASMは亜音速と比較的遅く、現代戦では通用しないとの声もあります。

たしかに、低速の巡航ミサイルは迎撃しやすく、極超音速兵器と比べたらなおさらです。ただ、いまだ巡航ミサイルが有効なのは間違いなく、決して過去の遺物ではありません。

たとえば、2022年には巡洋艦「モスクワ」が巡航ミサイルの攻撃で沈み、ロシア軍も亜音速のミサイルで空爆を実施しています。

完璧な防空体制でもない限り、遅い巡航ミサイルといえども、厄介な脅威になるわけです。