本命に代わって台湾有事を決する?
さて、日米両国が台湾有事における対中国戦を想定して動き出すなか、アメリカの有力シンクタンク「CSIS」が発表した台湾を巡る米中戦争のシミュレーションが話題を呼びました。
これはあらゆる想定に基づき、台湾有事がどう展開するかを記したものですが、特に戦局を左右するほど重要とされたのが「JASSM-ER」「LRASM」のような長射程ミサイル。
CSISのレポートでは、上陸した中国軍を無力化させるには、中国海軍の戦闘艦艇と支援艦艇を撃破したうえ、兵站支援能力を奪うのが必須とされています。
しかし、防空能力を高めた中国軍を撃破するにはスタンドオフ攻撃が必要で、「LRASM」を満載したB-1爆撃機を安全なアメリカ本土から出撃させることが勝利のカギだそうです。
ところが、その肝心の「LRASM」は生産数が少なく、2026年時点の見積もりでも「JASSM」が3,600発近くも配備されているのに対して、「LRASM」は空軍と海軍を合わせてもわずか450発程度。
B-1爆撃機に載せられるJASSM(出典:アメリカ空軍)
わずか3〜4週間で5,000発以上の長射程ミサイルを消費する予想ですが、本命の「LRASM」が450発ほどでは心許なく、まだ数に余裕のある「JASSM-ER」の対艦攻撃任務への投入が検討されています。
一応、「JASSM-ER」は一定の対艦攻撃能力を持つとされるものの、詳細は不明のままです。
もし、動く水上目標に対しても攻撃可能ならば、「LRASM」と併用して中国海軍に対する攻撃能力を高められます。
本来は「LRASM」の生産に注力すべきですが、「JASSM」の方が優先されている現状では、同ミサイルが十分な対艦攻撃能力を持つかどうかが、台湾有事の結果を左右するといっても過言ではありません。
要するに、台湾有事における本命の切り札は「LRASM」である一方、数が足りない見込みなので、結局は「JASSM-ER」に頼らざるを得ない可能性が高いわけです。
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