アメリカ海軍の次世代イージス「DDG(X)」とは?

イージス艦のイメージ図 アメリカ
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反省を生かした後継艦

アメリカの海軍力が原子力空母やイージス艦に支えられているなか、初代イージスともいえる「タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦」は老朽化にともなう退役を迎えています。

当初は「CG(X)」という新しいミサイル巡洋艦を目指していたところ、高コストを懸念した米議会によって計画は葬られました。

また、主力を務めている「アーレイ・バーク級」はイージス艦としてはすばらしい出来ながらも、これ以上の発展改良は設計的に難しく、次世代艦の登場が望まれています。

そこで、両者を置き換える一石二鳥案として期待されているのが、次世代イージス艦の「DDG(X)」です。

  • 基本性能:DDG (X)
排水量 13,500t(満載時)
兵 装 5インチ速射砲×1
垂直発射装置×96
SeaRAM発射機×2
3連装短魚雷発射管×2
レーザー兵器(予定)
建造費  1隻あたり約5,000億円?

DDG(X)は船体規模こそアーレイ・バーク級より大きいものの、最先端兵器を追求しすぎた「ズムウォルト級駆逐艦」の反省を生かして、基本装備の多くは実績あるものをそろえました。

なるべく開発リスクを避けたわけですが、DDG(X)自体は2060年頃まで使うつもりなので、あとから装備を変更・追加できる設計にはなっています。

例えば、SeaRAM発射機を出力600kWのレーザー兵器に変えたり、艦橋前に150kW級のレーザー兵器を設置する案が出ています。

ほかにも、前方のVLSは極超音速ミサイルにも対応した新しいバージョンへの換装を想定しています。この場合のセル数は32から12まで減りますが、トマホーク巡航ミサイルやSM-6対空ミサイルはひとつのセルに4発も装填できるため、全体搭載数は変わりません。

イージス艦のイメージ図DDG(X)の主な兵装(出典:アメリカ海軍)

将来の能力強化に備えた拡張性はシステム面にも共通していて、イージス・システムのソフトウェア更新はもちろん、その要となるレーダーも時代に合わせてアップグレードします。

こうした装備変更、特にレーザー兵器の導入は電力消費量の増加をもたらすため、DDG(X)はズムウォルト級で試した統合電気推進を導入しました。これによって、アーレイ・バーク級と比べて電力効率は20〜25%、航続距離は50%ほど伸びる見込みです。

コストを抑えられるか

このようにズムウォルト級駆逐艦の教訓をふまえつつ、アーレイ・バーク級とタイコンデロガ級の後継を目指すわけですが、やはり懸案となるのは建造費の高さです。

米海軍は1隻あたり約3,800億円としていますが、米議会の試算では約5,000億円台になるとされており、すでに予算オーバーとして問題視されています。

量産体制の確立と長期運用によるコスト削減が期待される一方、新兵器の導入が上手くいかず、ズムウォルト級と似た道をたどる可能性も否めません。

いずれにせよ、現行のアーレイ・バーク級より高くなるのは間違いなく、中国海軍に対抗するには性能だけではなく、数もそろえる必要があります。試行錯誤を繰り返してきた米海軍にとって、DDG(X)計画はもはや失敗が許されない状況です。

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