射程3,000km?島嶼防衛用高速滑空弾の気になる性能

島嶼防衛用高速滑空弾 陸上自衛隊
この記事は約4分で読めます。

日本独自の反撃手段

安全保障環境の急速な悪化を受けて、日本もついに敵地攻撃能力(対地攻撃能力)を持つことになりました。

これは離島防衛を想定したもので、必要な反撃手段を確保すべく、まずはアメリカ製のトマホーク巡航ミサイルを400発購入しました。

しかしながら、本格的な戦闘となれば、この数はわずか2〜3日で撃ちつくすため、日本独自の手段として新たに「島嶼防衛用高速滑空弾」を開発中です。

なにやら複雑そうな名前ですが、これは長射程の地対地ミサイルであって、事実上の弾道ミサイルといえる兵器です。

敵を射程圏外から攻撃する「スタンドオフ能力」を持ち、離島防衛で日本本土から侵攻部隊を狙いますが、その機動力と生存性を高めるべく、陸上自衛隊の移動式発射機で運用されます。

すでに防衛装備庁による開発は進み、2024年3月にはアメリカ・カルフォルニア州でブロック1の発射試験が行われました。また、実際に運用する陸自も、高速滑空弾を「MLRS(多連装ロケット砲)」の後継として扱い、すでに2個大隊の編成を決めています。

では、具体的にはどう使うのか?

まずはブースターで打ち上げたあと、弾頭部分にあたる滑空体が切り離されて、グライダーのように飛ぶ仕組みです。この滑空体は従来型のミサイルより小さく、レーダーに映りづらいという利点があります。

しかも、GPS誘導などで目標に向かうなか、あえて複雑な飛行経路をたどり、相手をかく乱したり、その迎撃を難しくするそうです。

その後、直前で急降下飛行に変わり、運動エネルギーを高めながら突入・破壊します。

これまでのミサイルよりも速く、迎撃が難しいわけですが、これはアメリカや中国、ロシアが開発を進めている極超音速滑空体(HGV)と同じ仕組みです。よって、日本版HGVといえるでしょう。

ブロック1、2の違い

島嶼防衛用高速滑空弾には2つのタイプがあって、まずは既存技術を使った早期配備型を「ブロック1」として2026年度に配備予定です。

これは射程300〜500kmの短距離弾道ミサイルとされるなか、一部では最大900kmという推測も出ています。もし、900kmの射程距離が事実ならば、南西諸島に運び込まずとも、そのまま九州から発射可能です。

高速滑空弾の運用イメージ

一方、より性能を高めた「ブロック2」は、超音速飛行で生じる衝撃波も利用して飛び、その速度や射程距離はブロック1をはるかに上回ります。その大きさも全く異なり、ブロック1のようなトラックではなく、大型トレーラーで運用するそうです。

つまり、同じ高速滑空弾ながらも、ブロック1は短距離ミサイル、ブロック2は中距離ミサイルに相当します。

さらに、このブロック2はさらに2つの種類に細分化されており、2027年度までに「ブロック2A」を開発したあと、「ブロック2B」を2030年代には登場させるつもりです。

どちらも超音速、長射程を誇るなか、特にブロック2Bの射程距離は最大3,000kmとも言われており、中国沿岸部のミサイル・航空基地はもちろん、より奥地の拠点まで攻撃できます。

島嶼防衛用高速滑空弾

ブロック1 ブロック2A ブロック2B
射 程 300〜900km 1,500〜2,000km 3,000km
速 度 マッハ6 マッハ12 マッハ17

こうした長距離攻撃能力をふまえて、ブロック2Bは九州や本州ではなく、北海道に配備予定です。想定戦域から離れた北海道であれば、敵の反撃を受けづらく、広さ的にも移動式発射機の運用、隠匿に向いています。

また、ブロック2の開発にあたっては、対地攻撃のみならず、対艦攻撃や潜水艦から発射するタイプの開発も視野に入れているとのこと。

いずれにせよ、島嶼防衛用高速滑空弾の配備により、日本の反撃能力は飛躍的に進化するわけですが、それはわずか15〜20年でトマホーク購入から射程3,000kmの極超音速ミサイルを独自開発するという変わり様です。

日本も買うトマホーク巡航ミサイルの威力と値段
信頼と実績のミサイル 桁外れの軍事力を誇るアメリカは、その強力な打撃力を支える兵器のひとつとして「トマホーク巡航ミサイル」を長年愛用してき...

コメント

タイトルとURLをコピーしました