島嶼防衛用の反撃能力
安全保障環境の急速な悪化を受けて、日本も反撃能力(敵基地攻撃能力)を保有しました。
まずは急いで反撃手段を確保するべく、400発の「トマホーク巡航ミサイル」を買い、自衛隊の対地攻撃能力を一気に引き上げました。
しかし、400発は本格的な戦闘では足りず、2〜3日で撃ちつくしてしまいます。そこで、独自の反撃手段の確保に取り組み、「島嶼防衛用高速滑空弾」を開発しました。
複雑で長ったらしい名前ですが、長射程の地対地ミサイルであり、事実上の弾道ミサイルです。敵を射程外から狙うスタンドオフ能力を持ち、本土から敵の侵攻部隊を攻撃します。
その後、名称が「25式高速滑空弾」に変わり、陸上自衛隊に配備されました。トラックの荷台に発射機を積み、機動展開力と生存性を高めた形ですが、陸自では2個大隊の編成が決まり、「MLRS(多連装ロケット砲)」の後継になりました。
他方、現在は防衛装備庁で開発が進み、2024年にはアメリカで「ブロック1」の試射を実施しました。
発射実験の様子(出典:防衛装備庁)
では、具体的にどう使うのか?
まずはブースターで打ち上げたあと、弾頭部分にあたる滑空体を切り離して、グライダーのように飛びます。
小さな滑空体はレーダーに映りづらく、GPS誘導などで目標に向かうなか、あえて複雑な飛行ルートをたどり、相手の撹乱と迎撃回避を狙う仕組みです。そして、突入直前では急降下飛行に変わり、強力な運動エネルギーで目標を破壊します。
従来のミサイルより速く、迎撃が難しいわけですが、アメリカ・中国・ロシアが開発中の極超音速滑空体(HGV)と似ており、日本版のHGVにあたる最新兵器です。
ブロック1・2の違い
さて、25式高速滑空弾はひとつではなく、既存技術で早期配備したブロック1、本命のブロック2に分かれました。
前者は2026年に配備が始まり、射程300〜500キロとされるなか、最大900キロとの推測もあります。もしこの推測が事実ならば、わざわざ南西諸島に運ばずとも、そのまま九州から発射できます。

一方、ブロック2は超音速飛行時の衝撃波を使い、ブロック1を速度と射程で上回ります。その代わり、全体的にブロック1より大きく、大型トレーラーが必要ですが。
つまり、同じ高速滑空弾といえども、ブロック1は短距離ミサイル、ブロック2は中距離ミサイルです。
もっと細かくいえば、ブロック2はさらに2つに分かれます。
2027年度までに「ブロック2A」を開発後、「ブロック2B」が2030年代に登場予定です。
どちらも超音速・長射程を目指すなか、2Bの射程は最大3,000キロに伸び、中国沿岸部の軍事基地はもちろん、中国本土の奥地まで届きます。

| ブロック1 | ブロック2A | ブロック2B | |
| 射 程 | 300〜900km | 1,500〜2,000km | 3,000km |
| 速 度 | マッハ6 | マッハ12 | マッハ17 |
この長距離攻撃能力をふまえて、ブロック2Bは本州・九州ではなく、北海道に配備するつもりです。想定戦域から遠い北海道なら、相手からの反撃が届きづらく、発射機が広い大地を逃げ回り、生存性を高められます。
なお、ブロック2では対地攻撃のみならず、対艦攻撃型・潜水艦発射型にも取り組み、運用上の選択肢を増やしました。
特に対艦攻撃型は命中の直前に「くるり」と回り、もはや変態的な機動性を獲得しました。この動きはバレルロールと呼び、予測不能な動きで迎撃をかわすため、命中率を大きく引き上げました。
いずれにせよ、25式高速滑空弾の配備にともなって、日本の反撃能力は飛躍的に進化しますが、短期間で射程3,000キロの兵器を開発する変わり様です。


コメント