もはや空母?イタリア海軍が誇る強襲揚陸艦「トリエステ」

外国
この記事は約3分で読めます。

重武装、高い輸送能力

イタリア海軍といえば、第二次世界大戦でイギリスに苦戦した印象が強く、あまり日本人にも馴染みがありません。

しかし、現代のイタリア海軍は欧州有数の戦力を誇り、空母「カヴール」を中心としながら、NATO地中海艦隊の一翼を担っています。

不安定な北アフリカ・中東に近い関係から、イタリアは強襲揚陸艦も運用しており、その最新鋭艦が「トリエステ」です。これはヘリコプター揚陸艦「ガリバルディ」の後継にあたり、戦後最大のイタリア艦艇として2024年12月に就役しました。

  • 基本性能:強襲揚陸艦「トリエステ」
満載排水量 36,770t
全 長 245m
全 幅 36m
乗 員 460名+兵員600名
速 力 25ノット(時速46km)
航続距離 13,000km
艦載機 各種ヘリ:15〜20機
F-35B:15機前後
揚陸艇 機動揚陸艇×4
小型揚陸艇×4
兵 装 76mm速射砲×3
25mm機関砲×3
垂直発射装置×16
建造費 約1,800億円

トリエステの見た目は空母に近く、その艦橋は通常用と航空管制用の2つに分かれています。これはイギリスの「クイーン・エリザベス級」と同じですが、艦内系統や運用面で合理的というのが理由です。

さて、強襲揚陸艦である以上、ヘリ向けの広い飛行甲板と格納庫を持ち、甲板への駐機も合わせれば、15〜20機の輸送ヘリを搭載できます。

一方、ウェルドックには上陸用舟艇やAAV-7水陸両用車が入り、アリエテ戦車などの車両用スペースも設けられました。最大4隻の機動揚陸艇に加えて、同じく4隻の小型揚陸艇も搭載できるため、一度に大隊規模の戦力を運べます。

約600人の海兵隊を収容すべく、船内は居住区が設けられていますが、乗せるだけならば、最大1,000名まで対応可能です。

強襲揚陸艦トリエステ(出典:イタリア海軍)

そして、トリエステは強襲揚陸艦にして珍しく、かなり重武装に仕上がりました。

特に個艦防空能力に重視したところ、25mm機関砲と対空ミサイルに加えて、3つの76mm速射砲を備えました。対空ミサイルは垂直発射装置から放ち、アスター・シリーズならば16発、イギリス製のCAMMは32発も装備可能です。

作戦行動では護衛がつくとはいえ、単独でもそれなりの防空能力を持ち、政情不安定な北アフリカ・中東沿岸部をにらみ、武装勢力などの攻撃を想定しているのがうかがえます。

F-35Bも使える多目的艦

海上作戦の中核を担うべく、トリエステは司令部機能も充実しており、ベッド28床を含む医療能力も確保しています。多目的という近年のトレンドに乗っかり、ひとつの船でいろんな役目を果たせるようにしたわけです。

これは航空運用面でも同じく、トリエステはF-35B戦闘機を運用できる軽空母にもなります。軽空母として使うならば、その編成はヘリと合わせて最大30機ほどですが、おそらく「F-35B×15、各種ヘリ×15」という具合になるでしょう。

また、飛行甲板には9つの発着スポットがあって、艦首には戦闘機向けのスキージャンプ台が設置されています。その結果、トリエステは強襲揚陸艦でありながら、強力な航空打撃力を手に入れました。

軽空母でもある「トリエステ」(出典:イタリア海軍)

空母カブールと合わせれば、イタリア海軍は最大2つの戦闘航空団を操り、地中海は言うまでなく、世界でも珍しい体制になりました。

海上自衛隊が「いずも型」を軽空母化したり、多目的揚陸艦の構想を抱くなか、イタリア海軍の動向は参考になるでしょう。

すでに航空自衛隊のパイロット育成のうち、一部教育をイタリア空軍に委託していますが、海上自衛隊もイタリア海軍との交流が増えており、空母カブールの来日に続いて、今度はトリエステが来訪するかもしれません。

イタリア・チェンタウロ戦闘偵察車が果たす役割とその価格
駆けつけ火力の装甲戦闘車 南北に細長い国土を守るイタリア陸軍は、北部に国産のアリエテ戦車を中心とした装甲部隊を配備しつつ、南部の守りは機動力の高い軽装...

コメント