米海軍の電子戦機
自衛隊の電子戦能力を強化すべく、電子戦機の導入が検討されているなか、アメリカのEA-18「グラウラー」が候補に上がりました。これは「F/A-18」戦闘機の派生型にあたり、相手のレーダーと通信を妨害する電子戦機です。
- 基本性能:EA-18G電子戦機
全 長 | 18.5m |
全 幅 | 13.68m |
全 高 | 4.87m |
乗 員 | 2名 |
速 度 | マッハ1.6(時速1,975km) |
航続距離 | 約2,400km |
高 度 | 約15,000m |
兵 装 | 対空ミサイル 対レーダーミサイル |
価 格 | 約95億円 |
米海軍は原子力空母を展開させながら、艦載機で敵に痛烈な打撃を与えますが、その中核を担うのがF/A-18シリーズです。
こうした空爆に先立ち、電子戦機で防空能力の無力化を図り、その目的でEA-18Gが開発されました。2007年から配備が始まり、米海軍で100機以上が使われているほか、オーストラリアも12機を導入しました。
高性能な電子戦システムを持ち、最大5つの電波妨害ポッドに加えて、地上のレーダー施設を破壊すべく、対レーダー・ミサイル(AGM-88 HARM)も搭載できます。電波探知装置で発信元をとらえたあと、強力な妨害電波を出してジャミングを行い、AGM-88で物理的に破壊する仕組みです。
なお、戦闘機をベースにしたところ、EA-18Gは電子戦機にもかかわらず、優れた運動性能を持ち、空対空ミサイルによる自衛能力も備えました(ただし、機関砲はない)。
EA-18G(出典:アメリカ海軍)
初実戦は2008年のリビア空爆ですが、2023年にはイエメンのフーシ派相手に戦い、空爆やドローン撃墜まで行いました。
最近は地対空ミサイルの普及と進化にともない、ますます航空優勢の獲得が難しくなり、ロシア=ウクライナ戦争の例をとっても、いまだ双方とも確保できていません。防空能力をつぶせないとなると、電子戦で一時的にでも妨害しながら、味方を支援する重要性が高まりました。
自衛隊も導入するのか?
さて、自衛隊では電子戦部隊の増強が進み、陸上自衛隊には「電子作戦群」も誕生しました。一方、航空自衛隊は電子戦機をほぼ持っておらず、数機の訓練機しかありません。
C-2輸送機に基づいて、新型の電子戦機が開発されるとはいえ、能力確保を急ぐとなると、EA-18Gの検討は自然な流れでしょう。
また、対地攻撃能力も獲得する以上、敵の地対空ミサイルを警戒せねばならず、電子戦機はひとつの有効手段になりえます。北朝鮮のミサイル基地にせよ、中国軍の地上部隊・水上艦隊にせよ、相手の防空網を封じるうえで、電子戦能力は欠かせません。
オーストラリアの事例を考えれば、実際に自衛隊が導入したとしても、せいぜい10〜20機規模になり、その運用・整備は初めての連続になります。本来、整備体系の複雑化は好ましくないものの、同盟国のアメリカ、準同盟国のオーストラリアが使っている限り、ノウハウ面でのサポートは期待できるでしょう。
しかも、EA-18Gは空母艦載機であることから、日本駐留の米第7艦隊でも運用されており、共同作戦で連携しやすいのが強みです。

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