第15旅団を「師団」に
対中国に向けた防衛力強化が進むなか、ここ15年で宮古島・与那国島・石垣島に自衛隊を置き、南西諸島の「空白地帯」は大きく解消されました。
しかし、こうした動きは終わっておらず、防衛省はさらに戦力を増強するべく、「沖縄防衛集団」を新設する予定です。
よくある「方面隊」とは違い、あまり「集団」は聞き慣れないですが、規模的には旅団と師団の中間にあたり、かつては大臣直轄の「中央即応集団」もありました（現在は陸上総隊に再編）。
ただし、仰々しく沖縄防衛集団といっても、第15旅団を「師団」に格上げするだけです。
第15旅団は那覇駐屯地にあって、1個普通科連隊を基幹としながら、約2,500名の隊員を抱えています。ここに普通科連隊をもう1個加えて、3,000人規模に増強するつもりです。
されど、通常の師団（約5,000人）に比べると、第15旅団は師団化されるとはいえ、その実態は「準師団」にとどまります。あくまで推測なれど、今回の増強は始まりにすぎず、とりあえず地元の反応を見ながら、将来の増員を検討するのでしょう。
実際に離島奪還作戦を行う場合、水陸機動団を筆頭に第1空挺団なども送り込み、第15旅団はその支援にあたるはずです。傘下の各島警備隊を指揮するとともに、作戦遂行に欠かせない重要拠点、あるいは沖縄本島の守りを固めます。
アメリカ軍も駐留する以上、沖縄本島は簡単には陥ちないものの、拠点として機能せねばならず、それが有事における離島防衛の前提です。師団化の動きに合わせて、後方支援能力の強化、隊員官舎の増設、備蓄燃料・弾薬の増量、司令部の地下化も行います。
日米の格差を是正する狙い
「準師団化」を目指す第15旅団ですが、その指揮官は現行の陸将補（少将）ではなく、陸将（中将）クラスに格上げします。そして、このポスト昇格も沖縄防衛集団の創設理由のひとつです。
同じ沖縄本島に駐留する関係から、第15旅団は米海兵隊と協力することが多く、両者の関係強化は欠かせません。
ところが、第15旅団のトップが少将なのに対して、海兵隊の第3海兵遠征軍司令官は中将です。この日米の階級差を解消するべく、準師団化で新たに陸将ポストを生み、指揮官を対等レベルにしたいわけです。
一般の会社で例えると、他の企業と協力しながら、同じ案件に取り組むとします。先方のチーム・リーダーが課長級にもかかわらず、こちらは係長級では「不均衡」が生じてしまい、どうしてもやりづらさが拭えません。。
階級社会の軍隊ではなおさらであって、今回のポスト昇格で両者の対等化を図り、連携を加速させる狙いがあります。さらに、陸将ポストに格上げすると、指揮官権限も強化されるため、地元との調整も進みやすくなるでしょう。
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