輸送機・救難機を目指すため
パイロットの育成には練習機が欠かせず、航空自衛隊ではプロペラ機の「T-7練習機」からスタートします。
ここで初歩的な操縦技術を身につけたあと、戦闘機を目指す者とそれ以外に分かれて、ジェット練習機に移ります。ちなみに、前者が乗るのはブルー・インパルスも使う「T-4練習機」です。
一方、輸送機や救難機などを志向する場合、ビジネスジェット機を改造したT-400練習機に乗り込みます。
- 基本性能:T-400練習機
全 長 | 14.75m |
全 幅 | 13.26m |
全 高 | 4.24m |
乗 員 | 操縦2名+同乗4名 |
速 度 | マッハ0.78(時速963km) |
航続距離 | 約3,000km |
高 度 | 12,500 m |
価 格 | 1機あたり約15億円 |
T-400は1994年に導入された練習機であって、C-130のような輸送機、または「U-125A」救難機を目指すパイロットが基本操縦課程で乗ります。その数は13機しかなく、以前は島根県・美保基地で飛んでいたものの、現在は静岡県・浜松基地の教育隊に集約されました。
ほかの練習機とは異なり、コックピット部分は学生の隣に教官が座る「並列スタイル」です。これは実際に乗る輸送機や救難機に似せた形ですが、真横から教官に怒られたり、「圧」を感じざるをえません(後ろからでもキツイが)。
学生はT-400を約47週にわたって操り、厳しい訓練と試験を乗り越えれば、ようやくパイロットの証である「ウィングマーク」を与えられます。
また、輸送機希望の学生のうち、一部は米国委託教育という留学プログラムでウィングマークを得ますが、こちらでは後述の「T-1A練習機」などに乗り込みます。
ベースは三菱重工の機体
T-400はビジネスジェットをベースにしたところ、良好な操縦性と十分な航続距離を誇り、練習機には適した性能になりました。
しかし、じつは「逆輸入」された機体なのです。
そもそもの発端は、三菱重工業のビジネス機「MU-300」が販売不振に陥り、アメリカのビーチクラフト社(現・レイセオン社)に権利を売却したことでした。
その後、同機をベースにした「T-1A練習機」が生まれて、これをアメリカ空軍が正式採用しました。これを見た空自が目をつけて、日本に逆輸入されたというオチです。
名称変更や改造されているとはいえ、本質的には三菱重工産の機体になり、定期修理なども同社に任せられています。
このように紆余曲折を経ながらも、空自に逆輸入されたわけですが、今後もしばらくはパイロット育成に使われます。ただし、U-125A救難機の廃止にともない、将来的に乗り込むのは輸送機の希望者だけになりますが。
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