ファランクスの対抗馬
対空戦闘の最終手段として、軍艦によくある「近接防御火器(CIWS)」ですが、これは特定の兵器ではなく、あくまで兵器の種類になります。
ただし、アメリカの「20mm ファランクス」が有名すぎるため、いまでは「CIWS=ファランクス」のイメージが定着。
ファランクス以外のCIWSといえば、よく対抗馬としてあげられるのが、オランダの「ゴールキーパー」です。
- 基本性能:ゴールキーパー
重 量 | 9.9t |
全 高 | 3.71m |
兵 装 | 30mm銃砲身×7 |
射 程 | 最大射程:3.5km 有効射程:1.5〜2km |
発射速度 | 4,200発/分 |
仰角・俯角 | -25°から+85° |
価 格 | 1基あたり約3億円 |
1967年のエイラート事件において、イスラエルの駆逐艦がエジプトの対艦ミサイルで沈み、その衝撃はオランダにも危機感を与えました。そこで、ゴールキーパーの開発に取り組み、試行錯誤を繰り返しながら、1984年にオランダ海軍で正式採用されました。
20mmのファランクスと比べると、大口径の30mmバルカン砲を使い、破壊力では上回るほか、より少ない弾数での撃破を見込めます。
このガトリング砲自体は「GAU-8/A アベンジャー」と呼び、あのA-10対地攻撃機に搭載されたものと同じです。4,200発/分の発射速度のみならず、抜群の信頼性を誇り、統計上は3万発で1回しか故障しません。
その装填数は1,190発しかなく、全力射撃ではすぐに撃ちつくすものの、再装填作業は最短9分で終わり、ファランクスのように外に出る必要はありません。
装置そのものはファランクスより大きく、設置する手間がかかるとはいえ、破壊力や信頼性、再装填のしやすさでは軍配が上がります。
2つのレーダーシステム
ゴールキーパーの射撃管制システムのうち、レーダーは捜索用・追尾用の2つがあって、前者は最大18個の目標をとらえながら、脅威度の高いものを選別できます。
このとき、捜索レーダーは2つの周波数帯により、電波妨害や乱反射の影響を減らすうえ、バックアップとして光学カメラと赤外線装置を備えました。
追尾レーダーにバタンタッチしたあと、そのまま射撃するわけですが、撃墜後は続いて2番目の脅威に自動対処します。
射撃するゴールキーパー(出典:オランダ海軍)
また、ファランクスと同じ完全自律型のシステムのため、起動後は対空警戒から捕捉、迎撃にいたるまで、全プロセスを自動的に行う仕組みです。
海上試験では標的のドローンに加えて、ハープーンなどの対艦ミサイルも撃ち落としており、300〜500m以内の迎撃成功率は100%になりました(破片までは防げない)。
採用国・運用実績は少ない
さて、オランダ以外ではベルギーとチリ、韓国など7カ国が買い、韓国海軍は強襲揚陸艦「独島」に搭載しました。以前はイギリスも使っていましたが、ゴールキーパーの改修費用が高く、アメリカのファランクスに乗り換えました。
しかし、この改修プログラムは2018年に見込みが立ち、現在はオランダ海軍で順次更新されています。
改良型では電子光学・赤外線装置の強化、ソフトウェア更新と操作パネルの導入、新しい弾薬への対応が実現しました。その結果、高速・小型目標に対処しやすく、複数のゴールキーパーを同時運用できるようになりました。
ただし、採用国と運用実績ではファランクスにおよばず、海上試験では結果を残しているとはいえ、実戦経験は捕らえたソマリアの海賊船を処分したぐらいです。
一方、ファランクスはフーシ派のミサイルを迎撃したり、陸上派生型の「C-RAM」は何度も防空任務を果たしてきました。

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