多機能なFFM!「もがみ型」護衛艦の性能・新装備とは?

自衛隊のステルス護衛艦 自衛隊
この記事は約3分で読めます。

海自初のフリゲート

拡大する中国海軍への対処を迫られるなか、海上自衛隊は多機能・省人化をコンセプトにした「もがみ型」を量産しました。

これは従来の護衛艦とは全く異なり、限られた人的資源をやり繰りしながら、護衛艦の稼働率を上げる新しい試みです。

  • 基本性能:「もがみ型」護衛艦
排水量 3,900t(基準)
全 長 133m
全 幅 16.3m
速 力 30ノット(時速55.6km)
乗 員 90名
兵 装 5インチ速射砲×1
垂直発射装置(VLS)×16
防空ミサイル11連装発射機×1
対艦ミサイル×8
3連装短魚雷発射管×2
12.7mm機関銃×2
建造費 1隻あたり約460〜500億円

かつては「30FFM」と呼び、広がる任務に対応するべく、多機能艦(マルチ)として登場しました。艦種記号も「DD」ではなく、フリゲートの「FF」に機雷戦(Mine)、あるいは多目的(Multi)の「M」が加わり、海自初の「FFM」になりました。

ステルス重視のデザインを持ち、近未来を思わせる外観になりましたが、それはアメリカの沿海域戦闘艦(LCS)に近いといえます。

また、汎用護衛艦は約150〜200名が乗るのに対して、「もがみ型」は機雷戦能力が追加されたにもかかわらず、自動化・無人化によって90名に抑えました。

この省人化を支えるのが「統合艦橋システム」「統合管制システム」という画期的なシステムです。前者で操艦を最低3名で可能にしながら、後者は艦橋やソナー室に分かれていた機能を戦闘指揮所(CIC)に集約しました。

そして、初めて「クルー制」を取り入れたところ、3隻に計4組の乗組員を配置する仕組みになり、整備・補修以外の停泊期間が短くなりました。ただし、普段の乗組員数は90名ですが、戦時では60人体制にふくらみ、全体の稼働数を増やす方針です。

クルー制のイメージ(筆者作成)

 

思い切った省人化を行い、艦艇の稼働率は高まったものの、一人あたりの負担が増えた側面は否めず、従来型の護衛艦とのギャップもあってか、現場では戸惑いの声もあるようです。

さはさりながら、「むらさめ型」の時も似た反応が起き、このあたりは慣れるまで仕方ありません。

次に装備面を説明すると、当初はコンパクト重視で最低限しか持たず、汎用護衛艦に見劣りするはずでした。それが船体の大型化にともない、垂直発射装置(VLS)が搭載されたほか、各兵装の拡充が図られました。

ただし、VLSは5番艦以降しか搭載しておらず、それ以前の艦はあとで追加予定です。このVLSはアスロック対潜ミサイルに加えて、防空強化でESSM対空ミサイルも搭載すると思われます。

もがみ型護衛艦の装備(出典:防衛装備庁)

最終的に仕上がった「もがみ型」を見ると、汎用護衛艦に準ずる自衛能力を誇り、対機雷用ソナー、機雷敷設装置、水上・水中無人機を通して、新たに機雷戦能力を確保しました。

一方、対潜能力は「SH-60哨戒ヘリ」に頼る部分が大きく、本格的な対潜捜索ソナーはありません。それでも、曳航式ソナーと短魚雷発射管は装備しており、対潜戦そのものには備えました。

あえて欠点をあげる

ここで強いて欠点をあげると、前述の水上・水中無人機は固定化が進み、常に1機は搭載する設計のため、やや運用上の柔軟性が欠けるといえます。

多目的フリゲートである以上、その搭載数・種類は臨機応変に変えるなど、状況に即した柔軟性が欲しいところです。このあたりはマルチ能力のFFMではなく、従来型の護衛艦に引っ張られた感が否めません。

さらに、省人化で乗組員を削減した分、被弾時のダメージ・コントロールは半ば諦めており、 CICが破壊されたらすぐに艦を放棄します。ダメージ・コントロールの指揮室、予備のCIC機能は備えておらず、乗員を脱出を優先させながら、別のフリゲートに再配置する方針です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました