戦車との違いは？16式機動戦闘車の強さと評価について

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機動力重視の「装輪戦車」

陸上自衛隊は「戦車」のイメージが強いなか、安全保障情勢の激変と組織改編により、その定数は1,200両から300両まで削減されました。

その代わり、タイヤ式（装輪式）の「16式機動戦闘車」をつくり、火力と機動力を両立させながら、本州・四国の各部隊に配備しました。

タイヤ式はキャタピラより高速・低燃費なうえ、騒音と振動が少ないメリットがあります。一方、キャタピラ式の戦車と比べて不整地、すなわち未舗装道路を走る能力では劣ります。

このような欠点があるものの、日本のように道路整備が進んでいる場合、その真価を発揮できるでしょう。

16式機動戦闘車は「MCV（Maneuver Combat Vehicle）」の略称を持ち、最新の10式戦車より18トンも軽く、全国の橋梁を渡れるのみならず、C-2輸送機などで空輸可能です。

8つのスタッドレス・タイヤを使い、舗装道路では時速100kmを出せるため、トランスポーターで運ぶ戦車とは違って、自力で長距離移動できるようになりました。また、戦車はキャタピラが破損すれば、大抵は行動不能になりますが、16式はタイヤが1〜2個は損傷しても問題なく、そのまま走り続けられます。

そして、新技術で車体の揺れを抑え込み、将来的には路外機動力（不整地走行力）も改善される見通しです。

攻撃面についていえば、退役した74式戦車の弾薬を流用すべく、105mmライフル砲を採用しました。これは火力支援には十分であって、対戦車用の砲弾を使えば、現代戦車も「撃破」できます。

一方、タイヤ式は射撃安定性で劣るとされるも、16式機動戦闘車は例外になりました。それは10式戦車の開発時にできた反動抑制装置、射撃統制機能のおかげです。これらを使えば、激しく動きながらも、「スラローム射撃」で高い命中率を誇り、従来の弱点を克服しました。

ただし、自動装填装置は搭載しておらず、射撃速度では10式戦車に負けるとはいえ、達人クラスの乗員ともなれば、3秒未満で装填できるそうです。

防御力の詳細は公表されておらず、小火器や機関銃、砲弾の破片には耐えるはずですが、10式戦車と同じモジュール式の増加装甲を使い、性能試験でカール・グスタフ（84mm無反動砲）を用いた点を考えると、対戦車火器を想定した防護力があると思われます。

さらに、乗員の快適性を高めるべく、2020年以降の生産車両にはエアコンが付き、それ以前の車両も徐々に追加されていきます。このエアコン設置で多少重くなったものの、乗員が熱中症になっては元も子もなく、当たり前の判断といえるでしょう。

ちなみに、以前は乗員向けのエアコンがなかった分、搭載したコンピュータ向けの冷却装置がありました。この冷却装置から漏れる冷気により、乗員も少なくない恩恵を受けていたそうです。

74式戦車と同等の火力を持ちながら、16式機動戦闘車は機動力で勝るため、現在まで約220両が調達されて、本州・四国で戦車の代わりを務めてます。

最終的には260両ほどが調達されるなか、16式機動戦闘車の登場にともない、戦車自体が不要になったわけではありません。

むしろ、戦車を含む敵の装甲部隊を撃破する場合、こちらも戦車を繰り出さねばならず、その必要性は現代も変わりません。それゆえ、定数が減ったとはいえ、戦車部隊は今後も北海道と九州で存続します。

特に「第7師団」は唯一の機甲師団である以上、最新の戦車が集中配備されており、有事では貴重な機動打撃力として、他方面にも投入されるでしょう。

たしかに、16式機動戦闘車は火力支援には申し分なく、その打撃力は敵にとって大きな脅威です。ところが、これが敵戦車との撃ち合いになれば、どうしても役不足が否めません。

結局のところ、歩兵への火力支援、87式偵察警戒車では荷が重い強行偵察、撃ってはすぐ逃げられる機動火砲の役割を果たします。それは戦車を待つ余裕がない、投入するほどでもない場面に使う「軽戦車」のような存在です。