対中国の切り札?自衛隊・地対艦ミサイル連隊の役割と編成

陸上自衛隊
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地対艦ミサイル大国の日本

陸上自衛隊は上陸した敵を撃破するのが主任務ですが、大前提として上陸そのものを阻止するのが極めて重要です。そこで出番となるのが、敵艦船を攻撃する「地対艦ミサイル連隊」という部隊で、高い命中精度の国産ミサイルを運用しています。

これら部隊では「88式地対艦ミサイル」、そして新たに登場した「12式地対艦ミサイル」を使って洋上の敵を撃破しますが、後者については射程距離を900〜1,500kmにまで延伸予定で、実現すれば東シナ海と西太平洋を一気に射程圏内に収めます。

ちなみに、地対艦ミサイルの専属部隊は世界的にも珍しく、アメリカにはこうした部隊はありません。

しかし、中国に危機感を抱くアメリカが地対艦ミサイルの重要性を再認識した結果、数で勝る中国海軍に対する有効打として注目しています。

アメリカはすでにNMESIS地対艦ミサイルの導入を始め、各島嶼への配置構想を打ち出しましたが、運用実績が豊富な陸自の地対艦ミサイル連隊にも大きな期待を寄せています。

北から南へ、5個から7個へ

現在、日本には5個の地対艦ミサイル連隊があって、そのうち3個は北海道、1個は東北に配備されている「北方偏重」の状態です。

これはソ連の北海道侵攻に備えた冷戦期の名残で、対中国を想定した場合は適材適所とはいえません。もちろん、北の脅威が消滅したわけではないものの、ウクライナで激しく損耗した今のロシア軍に北海道侵攻の余力などありません。

当面の大きな脅威が中国である点を考えれば、北部に4個連隊も集中しているのは現状に即しておらず、防衛省もこの点は認識しています。そのため、東北の連隊から部隊を引き抜いて南西方面に移転をさせつつ、同地域に第7、8地対艦ミサイル連隊を新編予定です。

全体の数も7個連隊まで増強され、九州・沖縄方面を統括する西部方面特科隊は計3個連隊体制になることから「第2特科団」に格上げされます。

部 隊 駐屯地
第1地対艦ミサイル連隊 北海道・北千歳
第2地対艦ミサイル連隊 北海道・美唄
第3地対艦ミサイル連隊 北海道・上富良野
第4地対艦ミサイル連隊 青森県・八戸
第5地対艦ミサイル連隊 熊本県・健軍
第7地対艦ミサイル連隊 沖縄県・那覇(勝連分屯地)
第8地対艦ミサイル連隊 大分県・湯布院

※第6連隊はかつて栃木県・宇都宮駐屯地にあったが、2011年に廃止済み。

最前線の南西諸島には奄美大島、沖縄本島、宮古島、石垣島にそれぞれ12式地対艦ミサイルを配備します。そして、将来的には射程を伸ばした改良型が配備されれば、東シナ海全域をカバーする体制が整います。

最新の12式地対艦ミサイル(出典:陸上自衛隊)

こうした南西諸島への新型ミサイルの配備は、中国が進めてきたA2AD戦略(接近阻止・領域拒否)を逆手に取った策ともいえます。

数で勝る中国海軍に対して、費用対効果に優れた地対艦ミサイルで接近阻止しつつ、行動を制約するわけです。もともと中国が編み出した戦略でありながら、空母のような高価値目標を持つようになった中国側が、皮肉にも逆用される立場になりました。

中国海軍が恐れる自衛隊の12式地対艦ミサイルとは?
最新の国産地対艦ミサイル 陸上自衛隊は敵艦船の撃破という役割も持ち、長年にわたって88式地対艦ミサイルを運用してきましたが、現在は「12式...

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