じつは「CIWS」の一種
ミサイルによる攻防戦が繰り広げられる現代海戦では、守る側は対空ミサイル→艦砲→近接防御システム(CIWS)の順で迎撃を試みます。そして、見てのとおり「最後の砦」にあたるのが「20mmファランクス」を始めとするCIWSシステム群です。
このCIWSにはよく見られるバルカン砲ではなく、短距離ミサイルを使うタイプも存在しており、それが最近増えつつある「SeaRAM(シーラム)」になります。
ここで注意したいのが「SeaRAM」とはあくまで発射機を含む兵器システムの総称であって、ミサイル本体は「RAM」というアメリカとドイツが開発した対空ミサイルです。
※CIWS自体も近接防御システムの総称で、特定の兵器を指しているわけではありません。
- 基本性能:RAM(RIM-116)
重 量 | 88.2kg |
全 長 | 2.82m |
直 径 | 14.6cm |
弾頭重量 | 11kg |
射 程 | 10〜15km |
速 度 | マッハ2.5(時速3,000km) |
高 度 | 約8,000m |
価 格 | 1発あたり約5,000万円 |
RAMは短距離防空ミサイルでありながら、ミサイル自身が目標を探知・追いかける「撃ちっ放し能力」を持ち、連続発射による同時対処を行えます。
気になる命中率については、米海軍が「95%」という数値を出していて、迎撃ミサイルとして信頼できるのが分かります。ただし、撃ち尽くした後は再装填までに時間がかかるため、通常の11連装型から最大21連装までの発射機が用意されました。
そして、SeaRAMとはこのRAMミサイルを11発装填した発射機に加えて、独自レーダーなどを備えた自己完結型の防空システムを指します。
しかも、この防空システムは容易に設置できるのみならず、20mmファランクスと同様に独立運用が可能です。すなわち、搭載艦のレーダーや兵器システムがダウンしても、自律式のSeaRAMは戦闘を続けられます。
米海軍では強襲揚陸艦や空母に載せているケースが多く、日本では「いずも型」護衛艦と「もがみ型」フリゲートで採用されました。
高いけど、長射程という利点
一方、コスト面ではRAMミサイルは1発あたり約5,000万円と推定されています。
日本はSeaRAM向けに計51発のミサイルを約65億円で購入したそうですが、これには運用マニュアルやサポート・システムの費用も含まれていて、SeaRAM本体は約7億円になる計算です。
一般感覚からすれば、決して安くはありませんが、より本格的な防空システムと比べたら安い部類に入ります。20mmファランクスよりは高いものの、2倍以上の射程距離と高い命中精度を期待できるので、最終手段として採用するには十分な性能です。
コメント