「むらさめ型」の発展版
海上自衛隊の花形といえば、イージス艦や戦後初の空母になった「いずも型」ですが、数の上で海上戦力の中核を担うのが汎用護衛艦になります。
その汎用護衛艦のなかで、ステルス性を意識して艦載ミサイルを垂直発射化させたのが「むらさめ型」で、それをさらに改良させたのが続いて登場した「たかなみ型」です。
⚪︎基本性能:「たかなみ型」護衛艦
排水量 | 4,650t (基準) |
全 長 | 151m |
全 幅 | 17.4m |
乗 員 | 175名 |
速 力 | 30ノット(時速56km) |
兵 装 | ・127mm速射砲×1 ・20mm CIWS×2 ・対艦ミサイル×8 ・垂直発射装置 (VLS) ×32 ・3連装短魚雷発射管×2 |
艦載機 | SH-60J/K哨戒ヘリ×1 (最大2機搭載可能) |
建造費 | 1隻あたり約640億円 |
1990年代後半に登場した「むらさめ型」は、汎用護衛艦としては申し分ない総合性能を誇ったものの、21世紀に入ると主砲の火力強化、射撃管制機能と対潜能力を向上させた「たかなみ型」が建造されます。
基本設計は「むらさめ型」とほぼ変わらず、当初は11隻を建造予定でしたが、新型ソナーなどの開発が間に合わず、最終的な数は5隻にとどまりました。
なお、このとき搭載予定だった新装備は、その後登場した「あきづき型」護衛艦に受け継がれました。
主な違いは主砲とVLS
では、「むらさめ型」とはどこが違うのか?
見た目が似ている両者を区別する最大のポイントは主砲です。
「むらさめ型」が76mm砲を搭載しているところ、「たかなみ型」はより大型の127mm砲を採用しました。これは「こんごう型」イージス艦と同じもので、対地・対水上攻撃力の強化を目指した結果です。
そして、「むらさめ型」がVLSを対潜・対空用に分けて配置したのに対して、「たかなみ型」では統合した方が運用上は好都合という理由で船体前部に集約しました。
このVLSはアスロック対潜ミサイルと対空ミサイルを装填していますが、近代化改修によって後者はシースパローから発展型の「ESSM」に換装されました。就役時から2つ以上の目標への同時対処能力を持っていたところ、ESSMへの変更で防空能力はさらに高まった形です。
また、4番艦からは新しい情報処理装置を搭載したり、5番艦のみ能力強化型のレーダーを採用するなど、同じ「たかなみ型」でも微妙な差があります。
一方、艦内ではヘリ搭乗員向けの待機室が新設されたり、居住区が大部屋化(12名→30名)しました。これらの区画変更は後部VLSの撤去にともなって余裕が生まれた代わりに、船体前部はVLSの集約と主砲大型化で逆にスペースが圧迫されたのが理由です。
さらなる改修案で延命?
最終建造数は初期構想の半分以下に終わり、新型装備も間に合いませんでしたが、性能面では「むらさめ型」と同じくバランスの取れた、使い勝手のよい護衛艦になりました。
汎用護衛艦に求められる点は十分にクリアしており、世界基準でも高性能の部類に入ります。
現在もパトロールから海外派遣までの任務をこなしているなか、最近は多機能レーダーを中心とした第二次改修案も出てきました。これは「もがみ型」フリゲートにあるような固定式レーダーを想定したもので、仮に実現したら2040年代までは現役続投になると思われます。
とはいえ、まだ技術公募の段階にすぎず、実際に行われるかは不明です。
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