独特でかわいい?グリペン戦闘機の強みや性能とは

スウェーデンのグリペン戦闘機 戦闘機
この記事は約4分で読めます。

スウェーデンの分散運用機

スウェーデンは最近まで中立政策を貫き、他国への依存度を下げるべく、国産の兵器開発に力を注いできました。

たとえば、ウクライナに供与された「NLAW対戦車ミサイル」、早撃ちで知られる「アーチャー自走榴弾砲」など、中立の産物として高性能兵器が生まれました。

そんなスウェーデン製の兵器のうち、「グリペン戦闘機」は独自色が強く、航空マニアに人気のある機体です。

  • 基本性能:SAAB・JAS 39 グリペンE(最新型)
全 長 15.2m
全 幅 8.6m
全 高 4.5m
乗 員 1名
速 度  最大マッハ2.0
(時速2,470km)
航続距離 最大4,000km
高 度 15,000m
兵 装 27mm機関砲×1
対空ミサイル、対地ミサイル、対艦ミサイル
誘導爆弾など
価 格 1機あたり約130億円

グリペンとは「有翼獅子」の意味を持ち、マルチロール機として制空はもちろん、対地・対艦攻撃までこなします。汎用性が高いにもかかわらず、コストが比較的安いですが、これは身の丈に合った性能を目指して、航続距離とステルス性で妥協したからです。

そして、スウェーデン特有の運用構想に基づき、国土に分散配置されてきました。スウェーデンは山岳地帯と積雪が多く、山に戦闘機用のハンガーをくり抜き、全滅リスクを回避しています。仮に航空基地や滑走路が破壊されても、これらハンガーにある戦闘機は残り、近くの高速道路から出撃させる仕組みです。

それゆえ、グリペンは「短距離離着陸能力」を持ち、長さ800mの高速道路から飛ぶなど、各地で現れる神出鬼没の戦闘機になりました。

こうした高速道路には給油所、整備スペースはあれども、通常の航空基地に比べると、どうしても設備面では劣ります。だからこそ、グリペンは整備機材をコンパクトにしたり、メンテナンス手順を簡略化しながら、その作業効率を大幅に高めました。

野外整備の様子(出典:サーブ社)

その結果、道路脇で野外整備する場合、燃料トラックを含む数台の車両に加えて、5、6名の整備員がいれば問題ありません。このとき、再武装と給油には最短15分しかかからず、1時間でエンジン交換まで行えるそうです。

まとめると、グリペンは多くの兵器を積み込み、長時間飛行をするのではなく、分散拠点を活かしながら、「補給→再出撃」を繰り返すことにしました。

小さいが、現代戦にも対応

グリペンの主翼には水平尾翼がないものの、別にあるカナード翼で揚力を発生させており、全体的に軽量化が進んだところ、優れた機動力を確保しました。

さらに、単発エンジンは排気効率の改善に取り組み、出力向上を実現するとともに、最新のE型では長時間の超音速飛行、「スーパークルーズ」を実現しました。

一方、武装は西側標準の対空ミサイル、国産の対艦ミサイルなど、さまざまな兵器から選び、任務に合わせた柔軟性を発揮します。この点においても、E型では搭載箇所が8個から10個に広がり、全体の兵器搭載量が増えました。

また、開発時から地上レーダー、僚機との連携を想定したため、電子機器はソフトウェアを更新すれば、その都度アップグレードできる仕様です。E型では電子戦能力の強化を行い、新しいAESAレーダーを搭載したほか、囮の機体を創り出す「欺瞞能力」まで獲得しました。

スウェーデンのグリペン戦闘機グリペン戦闘機(出典:スウェーデン空軍)

このような魅力を受けてか、その導入はスウェーデンにとどまらず、ハンガリー、チェコ、南アフリカ、タイ、ブラジルが購入済みです。最近ではロシアの侵略にともない、ウクライナが100機以上のE型を買い、空軍力の飛躍的強化を図りました。

日本でも「F-4戦闘機」の後継を決める際、一時はグリペンが話題になりました。しかし、日本は国土が南北に縦長く、広大な海洋面積を抱える以上、航続距離が足りませんでした。

山岳地帯が多い点は同じとはいえ、日本とスウェーデンでは運用構想が異なり、少なくとも日本では高速道路は使えず、あまり分散拠点化は想定していません。

それでも、グリペンは性能の割には安く、最新のステルス機を買う余裕がない、そこまで求めていない場合、有力な候補としてあがるはずです。

ステルス機ではないものの、グリペンは機体そのものが小さく、その分だけレーダーに小さく映ります。E型ではレーダー反射面積を減らすべく、一定の工夫を行いながら、さらなる探知の回避を目指しました。

ただ、性能的にはF-16戦闘機がライバルにあたり、その最新型はグリペンと価格面で大差がなく、ステルス機のF-35も量産効果を通して、ついに単価が100億円を切りました。

したがって、グリペンの将来は安泰とはいえず、むしろステルス機と中古戦闘機の間に入り、「中途半端」な立ち位置になる可能性が高いです。

早撃ち!アーチャー自走榴弾砲のスゴイ性能と射程について
ズバ抜けた連射能力 北欧のスウェーデンといえば、ロシアのウクライナ侵攻で危機感を抱き、フィンランドとともに北大西洋条約機構(NATO)に加...

コメント

タイトルとURLをコピーしました