フランス産は低空飛行が得意
対艦ミサイルといえばアメリカのハープーン・ミサイルが思いつきますが、このライバル的存在としてフランスが開発した「エグゾセ」というのがあります。
アメリカ製を多用する日本ではあまり聞きなれないものの、エグゾセは南米や中東でも広く使われているフランス産ベストセラーのひとつであり、現在に至るまで4,000発以上が生産されました。
⚪︎基本性能:エグゾセ艦対艦ミサイル(MM40ブロック3)
重 量 | 780kg |
全 長 | 5.8m |
直 径 | 34.8cm |
速 度 | マッハ0.93 (時速1,148km) |
射 程 | 約200km |
価 格 | 1発あたり約7,000万円 |
フランス語で「トビウオ」を意味するエグゾセは1970年代に登場した対艦ミサイルで、ハープーンと同様に水上艦や潜水艦、航空機から発射される複数のバージョンが存在します。
水上艦から発射されるものは正式名が「MM」から始まり、潜水艦と航空機で運用されるエグゾセはそれぞれ「SM」「AM」が番号の前に付きます。
ちなみに、このミサイルを「エグゾ『ゼ』」と誤称する人がしばしば見受けられますが正しくは「エグゾ『セ』」です(フランス語は発音が難しいですね)。
エグゾセは基本的に搭載されたセンサーやレーダーを使って目標に向かうのですが、探知を避けるために海面からわずか3mほどの超低空飛行を行いながら突入します。
よって、捉えた時にはすでに10km近くまで迫っていて、迎撃が間に合わない可能性が高いです。まさに、この超低空飛行のまま突入する点が、一旦飛翔して上部アタックを狙うハープーンとは異なります。
艦対艦エグゾセの初期型「MM38」は、主に小型艦での運用を想定していたことから射程が短いという欠点がありました。
1981年に登場した改良型「MM40」では射程距離が延伸され、その後も誘導性能の向上や電波吸収剤を用いた探知率の低減が試みられました。
そして、最新型の「MM40ブロック3」は電波妨害への耐性を高めたほか、ターボ・ジェットエンジンを搭載して約200kmまで射程を伸ばしました。また、GPS誘導も取り入れることで、沿岸部にある地上目標への攻撃も可能になりました。
英を苦しめるも、不発も多い
フランス海軍の標準装備となり、南米や中東、東南アジアの艦艇でも見られるエグゾセですが、艦対艦版のMMシリーズよりも空対艦バージョンの方が有名といえるかもしれません。
というのも、エグゾセが一躍有名となったのはこの空対艦バージョンが1982年のフォークランド紛争でイギリス海軍に大きな損害を与えたからです。
フォークランド諸島の奪還を目指すイギリス軍に対してアルゼンチン側が空軍機からエグゾセを放ったところ、駆逐艦1隻とコンテナ船1隻を撃沈してイギリスの出鼻を挫くとともに、同国海軍の行動を制約しました。
ただし、このとき駆逐艦に命中したのは不発弾であり、沈没原因は直撃の余波で起きた火災でした。
それでも、アルゼンチンがこの時点で保有していたエグゾセがわずか数発だったのを考えると、その戦果は十分すぎるもので、イギリスが必死に追加購入を妨害したのもうなずけます。
こうしてデビュー戦で強烈な印象を与えて、その後の注文が殺到したものの、イラン・イラク戦争では不発弾が多かったためか、「エグゾセ=不発」のイメージがつくようになりました。
確かに、同戦争で起きた米駆逐艦への誤射事件でも、直撃したエグゾセは不発でしたが、改良によっていまは問題ないレベルに修正されています。
現在30カ国近くで運用されているエグゾセはフランスの主要輸出兵器の一角を占めており、今後もしばらくはハープーンのライバル、そして西側対艦ミサイルの定番として現役を続ける見込みです。
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