F-22より速く、高いステルス
世界最強と評される戦闘機のうち、アメリカの「F-22ラプター」はその名に恥じることになく、空戦では無類の強さを発揮します。
しかし、そんなF-22の対抗馬として、立ちはだかった機体がありました。
それが「YF-23」というステルス試作機ですが、これは高性能な機体にもかかわらず、F-22との一騎打ちに敗れたことから、「幻の最強戦闘機」になりました。
- 基本性能:YF-23戦闘機
全 長 | 20.55m |
全 幅 | 13.28m |
全 高 | 4.24m |
乗 員 | 1名 |
速 度 | マッハ2.2(時速2,330km) |
航続距離 | 約4,500km |
高 度 | 約20,000m |
兵 装 | 20mmバルカン砲×1 空対空ミサイル |
YF-23は大手航空機メーカーの「ノースロップ」、「マクドネル・ダグラス」が共同開発したもので、アメリカ空軍の次期戦闘機になるべく、1990年に初飛行を迎えました。
ステルス性を徹底的に求めたところ、通常の水平尾翼と垂直尾翼ではなく、V字型の特殊な尾翼を持ち、ひし形の主翼とともに、斬新なデザインになりました。
その効果はすばらしく、ライバルのF-22(ロッキード社)に比べると、ステルス性では上回り、約50回の試験飛行では良好な飛行性能を示しました。詳細は不明ながらも、速度と燃料搭載量でもF-22に勝っていたそうです。
つまり、YF-23の性能を考えると、次期戦闘機になる可能性は十分でした。
機動性・整備性で劣った
ところが、1991年にF-22が正式に選ばれたため、次期戦闘機としてのYF-23は「ボツ」になり、その生産は2機の試作機で終わりました。
負けた原因を追及すると、F-22の方が機動力と操縦性能で勝り、生産性や整備性で有利だったそうです。
実際の量産とメンテナンスを考えたとき、革新的な設計のYF-23ではなく、保守的なF-22の方がリスクが少なく、部隊配備上は好ましいとされました。

さらに、政治的思惑も働いたとされており、ロッキード社にも受注案件を与えて、保護するというものです。
開発当時をふり返れば、YF-23のノースロップ社はF/A-18戦闘機のみならず、B-2爆撃機の生産も担い、いろいろ受注を抱えていました。一方、ロッキード社は戦闘機の案件はなか卯、いわゆる「手持ちぶさた」の状態でした。
軍需産業の一翼を占める以上、ロッキード社にも一定の発注を行い、全体のバランスを取ったと思われます。
国家プロジェクトに政治が絡むのは仕方なく、どこまで影響があったかは不明とはいえ、適度な競争と安定した受注を通して、軍需産業と技術力を維持するのは国益に合致します。
いずれにせよ、F-22に敗れたYF-23は博物館行きになり、国立アメリカ空軍博物館(オハイオ州)、西部航空博物館(カリフォルニア州)にそれぞれ展示中です。
試作機のみで終わった「幻の戦闘機」ですが、運命の歯車が狂っていなければ、最強のステルス戦闘機として、今頃は空を飛んでいたかもしれません。

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